〜龍と刀〜
宝刀と妖刀T
何らかの力を受けたのか、土煙が突如逆巻く。
「この魔力、まさか……伏せるのだ!」
渦を巻いている中心から漏れる魔力が何なのか、白銀は知っていた。だから、警告をする。
その瞬間、陽の頬を何かが掠めた。流れる血と、傷を感じて、すぐに横を通った物体を目で追う。
「久しいな白銀?会うのは何百年振りだったか」
背後で静止している黒い刀。口振りからして、白銀の知り合いだろう。
「封牙……まだ、在ったのか」
「何だ、こいつ?」
垂れる血を拭いながら、白銀と封牙と呼ばれた刀を見比べる。大きさで言えば、封牙の方が長い。見た目はほぼ一緒だが、色がはっきりと分かれていた。
「紹介するよ。僕の新しい武器、封牙さ。僕と同じで血が好きでね?気は合うよ」
「そしてオレと白銀は、人間で言うと兄弟といった関係だ……坊主、なかなか美味い血だったぞ?」
ゆっくりと雹の手元に戻る封牙の先端には、陽の血が付着している。まるで吸っているかのように脈打つ刀身。
「そうなのか白銀?」
「認めたくは無いが、事実である事に変わりはない。……あやつに傷を付けられるな。魔力ごと持っていかれてしまう」
無言のままに白銀を構え直し、体制を整える。
対する雹は右手に封牙を、左手に氷の剣を握るという二刀だ。
「じゃあ、仕切り直しと行こうか!」
封牙を切り上げるようにして、砂を舞い上がらせ、その隙に陽の眼前へと迫る。
金属のぶつかり合う鈍い音が響き、その衝撃による火花が夜の校庭を照らす。
「どうした白銀?大分衰えたんじゃないのか?」
黒と白が交差する度に封牙が挑発を仕掛ける。
「当然と言えば当然!お前はオレみたいに斬ったモンから魔力を喰わないからな?どうだ、一度喰らってみないか?」
「ほざけ……」
その相手が陽ではなく、白銀なのだ。
使い手は使い手同士で。武器は武器同士。
「アッハハハ!リーチが違う武器だとタイミングが難しいよね?」
「残念だが、二刀使いでお前より格段凄い人を知っている。その人に比べたら、全然余裕だ!」
牽制のために溜めておいた水気を放出するとともに、白銀を横に払う。
「(重い……?)」
その時感じた違和感。いつもとは微妙に違う剣線と、白銀を振った時の速度。それらが自分の気のせいなのか、あるいは白銀の物なのか分からなかった。
「陽、頼みがある……」
「……何だ?」
「やつを、封牙を破壊してくれ。あれは我が倒さなければならない物だ。危険で、人が生きる世に在るべき物ではない」
違和感の原因は白銀だった。怒気を多く含んだ声に、陽は驚く。
普段の冷静さが、封牙を目にしてから一転し、怒りが白銀を支配していたのだ。
「白銀は、本当にそれで良いんだな?」
「意見を変えるつもりはない」
「封牙が兄弟だとしても?」
言葉に詰まる白銀。
再び始まる激しい剣劇の最中、陽は白銀をじっと見つめる。
「兄弟だとしても、だ。我は奴を破壊する。しなければならない」
「そっか……」
残念そうに笑い掛ける陽の心情を、白銀は理解出来なかった。
「(何故、そのような顔を……我は間違っていないはずだ。封牙は危険な存在。だから、破壊する)」
ずしりと重みを増す白銀。怒りによる魔力の上昇。
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