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〜龍と刀〜
プレゼントを探しにT
*****


陽の家から歩いて三十分弱。
休校になったからか、どこかで見たような連中がうろうろしていた。
買い物然り、カラオケ然り。
あまつさえ教師の姿まで。
途中、クラスメートにも会った。出て来る単語が、「良く生きてたよね」。
確かに自分でもそう思う。あの状態から生還出来たのだから。

「来てみたは良いが……まったく、なんだってどいつもこいつも似通った反応を!」

「ま、まあ抑えて抑えて」

「人を勝手に殺すなって話だ……で、どうする。欲しい物でもあんのか?」

月華は、少し唸ってから即答した。

「うーん、特に無いかな?」

「……帰るぞ」

「あー待ってよ!何でも良いから」

「何でもって、お前な。そういうの結構困るぞ。服だろうがアクセだろうが、俺の金が足りそうだったら買ってやる」

ぱーっと目を輝かす月華。
対する陽は、大変な事を言ってしまったという顔だ。

「そうするとアレも欲しいし……あ、アレも欲しかったな〜」

「待て、お前の欲しい物ってのは俺の金で足りるのか?」

聞く耳持たず。心ここにあらず、といった感じの月華。
ここで、陽は自分の財布の中身を確認。

「英世さんが二枚、百円玉が三枚。平等院が八枚に、一円が六枚か……二千三百八十六円、これ以内で収めろ」

面倒な言い回しで金を数え、他に商品券やら何やらが無い事を確認して財布を仕舞う。

「あれ?陽ちゃん、クレジットカード持ってなかったっけ?」

「……置いてきた」

陽の口座は全て協会側が管理をしている。毎月の給料と手当金、魔物の討滅による報酬など。
月数十万という金額を稼いでいるのだから、滅多な事で足りなくなるという事は無い。ただ、手元に無いだけである。
給料の話をすると、正式な頭首、十六夜などは陽の二倍、もしくはそれ以上だ。
要するに金持ち。
だがしかし、つい最近、医療費で大量に引かれているため、当分の間クレジットカードは持ち歩かない事にした。
どちらかというと、あまり持ち歩きたくないというのもある。
中学生の時、財布に金を入れるのを忘れた陽は、仕方なくクレジットカードを出した。ゴールドの。
千円程度の買い物だった事もあり、店員におかしな目で見られた経験からだ。

「とりあえず行くぞ……まあ、お前が決めるんだが」

「うん!じゃあ、まずは服を見よっ!」

「……まず、って言ったな?おい、月華!くそ、下手に言うんじゃなかったな」

数メートル先を歩いている月華の後ろ姿にやれやれと呟いてから後を追った。


*****


それから何軒の店を回っただろうか。
最初に行った店では、女性物の洋服がやたら高い事に驚き、勿論陽の手持ちが無いために断念。
二軒目の店では、チャラチャラした髪の長い男たちが入り口でたむろしていたのが気に入らなかった陽は、強烈な睨みを効かせる事で撃退。すると、店員が満面の笑みで好きな物を一点上げるよ、と言った。
タダで貰うのに気が引けた月華は自分から辞退。
思い出すとキリがない、とまでは言わないが、それなりに沢山の店を見て回った。
結局、月華のめぼしい物は見つからず、ぶらぶらと街を歩いている。

「ねえ、どっかいいお店無いの?」

「俺に聞くな……ん?」

陽の目に留まった一つの店。
近代化が進む街に不釣り合いな、木造一階建て。
看板にも錆があり、正確な名前は分からないが。

「骨董屋、か……どうする?」

「ツボとか掛け軸とか好きじゃないよ」

「案外掘り出し物があるかもしれない。行くだけ行ってみるか。何もなきゃ出れば良い」

言いながらガラス張りの戸を開け、中に入っていく。

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あきゅろす。
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