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〜龍と刀〜
夢か現実か
*****


嘲笑う一つの声と耳を裂くような悲鳴が大量に聞こえる中、ただ空を見上げていた。
動きたいのに動かせない体。まともに動かせるのは目だけ。と言っても、その視界は霧がかかったようにぼやけて、はっきりと見る事が出来ない。

「(もしかしたら、見ない方がいいのかもな……)」

指を動かそうとしてみたが、どこからともなく全身に激痛を感じた。電気が体中を走り抜けたかのような。今まで、感じた事が無い痛みだった。

「(ハハッ……だっせえな、守るってカッコつけて言ってみたが……俺、負けちまった)」

守ってみせると決意したはずだった。
だが、出来なかった。
こみ上げてくる悔しさ、自身の無力さへの怒り。

「(あれ……?俺、泣いてるのか?……泣かないって決めたのになぁ……なんにも、守れなかったよ)」

約束も、決意も、守りたい人たちも。
小さい頃に剣の師匠と交わした約束。
負けないという決意。
この街を、友達を守ると。

「し……がね!俺、強く、強くなりたい……!」

落とした相棒に、かすれた声で願いを告げる。
答えたのは白銀ではなかった。いや、なかったのかもしれない。

「出来る……お前なら。だから、今は眠れ……任せろ」

その言葉に意識を委ねた。
夢でありますようにと。


*****


目を開けると、まず見慣れない真っ白な天井が目に入った。
次に感じたのは匂い。薬品の染み付いたような衣服、枕にベッド。感覚的にここがどこなのか悟らされた。

「病院……か」

指を動かしてみる。
問題はない。
体は、と起き上がろうとした時、危うく腕の点滴が倒れて来そうになり、点滴の場所を変えてから起き上がってみた。
多少体のだるさは残っているものの、痛みを感じる事は無く、病院で寝ている程悪いとは考えられない。

「……」

無性に落ち着かなかった。
自分がやられた後、学校は?雹は?そしてみんなは?聞きたい事が山ほどあるが、病室に人が入ってくる気配はなく、何故か同じ病室には誰も居ないため、聞く事が出来なかった。

「テレビでも……金取んのか、コレは?ったく、ヒマだ」

そう。病院のテレビは金を徴収するのだ。一回五百円となかなかの高額、しかも何時間か経過すれば自動で電源が切れる。理由は分からないが、バラエティー番組を視聴していた患者が、笑いすぎて傷口が開いたからとかだったりする事がある。カード制のも合ったりする訳だが、患者本人がどれくらい病院に居なければならないのかによって、無駄になったりする。何かと不便なのだ。

「どうしようか。俺はすこぶる元気なんだが……久しぶりに眠気が無いし。白銀はどこにあるのかわかんねえし……そもそもだ。誰が俺をここに運んだのかってのも気になるな」

枕元にあるナースコールのスイッチが目に入る。

「……押してみよう。これで何かが分かるなら……何を期待してるんだ俺は?」

井上みたいにはなりたくないな、と呟きながらナースコールをポチっと押す。

−−数分後。
若い看護士がやって来た。今は看護婦ではなく、看護士と呼ぶのが世の常らしい。
若い看護士は、陽が起きている事に驚いた様子で、ちょっと先生を呼んできます、と走って行った。

「ふむ……君、本当に人間かい?あんな大きな傷をたった三日で完治するなんてね?宇宙人とかかい?」

年を召した男性の看護士が聴診器などを使って簡単に陽の体をチェックする。

「……ふざけてますか?いや、まあ、良いです。とにかく、あの後どうなったのか、いつ退院出来るのか、その他諸々聞きたいんですが……聞かせて下さい」

「退院はねえ、今すぐでも大丈夫そうだね。うーん、あの後?私らが知ってるのはニュースでやってるような事だよ?それでも良いなら−−」

「ニュースどころか、金がありません」

「……話そう」

陽は看護士から色々と話を聞いた。しかしそれらは、まったく有益な情報では無かった。むしろ、違う物。
こういうのは白銀に聞こう、と病室へ戻り、誰かが用意していたジーンズのパンツとティーシャツに着替えて病院を後にした。


*****

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あきゅろす。
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