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〜龍と刀〜
小さな交渉
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――日が昇り始める頃。陽と雪那はしっかり回収され、傷の治療も済ませて協会本部の一際広い一室へと呼び出されていた。

「さすがは剣凰の代理やな!見事に撥ね退けて帰って来るとは……うちの娘も助けて貰い、感謝する!」

まだ早朝だと言うのに、『荒虎流』の頭首昌吾はその大きな体からこれまた大きな声を張り上げて陽に全力の感謝の言葉を述べる。びりびりと大気すら振るわせる大音声。何の魔力も込められていないでこれなのだから恐ろしいものである。

「荒城……静かにせんか……」

「っとこれは長、失礼を」

「感謝の意を伝えるのは悪いとは言わんが。久しいな剣凰の。こうして顔を合わせるのはいつ以来か」

昌吾を制し、新たに陽に言葉を投げたのはこの協会の長だ。相変わらず長い白髭を自慢するように撫で付ける仕草、優しそうであるのにどこか威圧感を与える不思議な雰囲気を纏う老年の男。

「さあね……もう何年振りって気がするよ」

「そうじゃな。変わりはないか?」

「変わり過ぎたな。色々と」

「そう、か。うむ、それで首尾はどうであった?」

長い机の丁度中央、陽の真正面に座る彼は変わらない態度で報告を待つ。
陽もひとまず頭で考え――まだぼんやりと靄が掛かっているような気がしているらしい――、言葉にする。

「首尾も何も蛇だったとしか。しかも神族。魔力どうこうはあいつじゃないってよ」

「なるほど!首尾と蛇を掛けたなかなか面白い洒落やな!そりゃあうちの弟子も見間違うわなあ!」

「師匠……静かにしよ……?」

陽としてはそんなつもりは一切無かったので密かに眉を寄せて小さく溜息。

「その間に襲撃もあり、相手を捕らえたと」

「そういう事。調べるのはここの仕事だからあとはよろしく。それと俺の感覚だけど、ここ最近じゃ敵側の奴らも魔術使ってくるようになってきてるし、確実に……言いたくはないけど強くなってる」

「うーむ……こちらも魔術師育成が必要という事かの?」

「やってるけど追い着かない、って言うんだろ?そんなのは知ってるよ」

協会の内情など、代理として動いている陽からしてみれば知っていて当然である。だが、それでも何かを守る為にはやって貰わねばなるまい。

「それこそ頭首陣の役目。うちは喜んで受けますぞ」

手を叩き岩のような顔をぐにゃりと歪めて言う昌吾。

「協力を要請してみよう。荒城のように快く受け入れてくれるやもしれんな」

「このご時世に少しでも流派の弟子は増やしておきたいしなあ」

「本音が出ておるが……まあ良い。今後の方針も改めて検討しておこう。捕らえたあの魔族もしっかりと詰問しておく。他に報告は?」

「んー……特になし、だな」

腕を組み、捻り出そうともしたが昨夜の事ならばこれでほぼ片付いたようなものだった。

「承知した。なら最後に聞いておこうかの。その蛇神とどんな話が出来た?」

「大した事じゃないかもしれないけど……言ってしまえば歴史さ。龍族の……滅亡した原因を聞いてきた」


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あきゅろす。
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