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〜龍と刀〜
瀧に潜むはV
――蛇。龍は蛇の神格化されたものだという説もあるが、この世界では違う。確かに見た目こそ似ているが、別格の存在であるのだ。龍族は神族に最も近く、総合的な能力を見ても匹敵していると言っても過言ではない。対して蛇であるが、大まかに分けられると獣族。魔力を持つ生きとし生けるもので、更に人間ではないものたちの俗称でもある。故に能力にはばらつきがあり、一概に強いだの弱いだのと決め付けられない。

「それで蛇の神さん、一つ聞きたいんやけど……」

そして種族の中でも極めつけ力のあるものを神族と呼ぶ。生まれながらにして神族であったか、成長する内に力を得て神族になったかの違いである。
そして陽と雪那の目の前にいる白い大蛇が恐らく後者だ。

「あなたはどうして傷を?」

「不覚を取ったとは言いたくないが仕方ない。如何せん小さくてな。追い払ったは良いが」

「……襲われた?神族が?誰にだよ」

「知らん。何やら騒がしい連中だ。ところで坊主、お前には龍の血が見えるのだが……ああなるほどこの前の人間はそれで逃げ出したのか……」

血が見える、とは良くわからない単語であったが、どうやら大蛇は自分の言葉に合点がいったらしい。

「そういうこった。あんたが本当に龍族だったとするなら話を聞いてみたかったもんだよ」

「ほう、話とな」

「ああ。龍族が何で滅びる事になったのかとかな」

陽がもし自分以外に龍の血を持つ者と出会った際に聞いてみたかった事の一つ。その他にも自身の両親の事など。

「……なんだそんな事で良いのか」

まるで溜息を吐くように舌を揺らす。この大蛇は知っているらしい。龍族が滅亡してしまった理由を。

「知ってるのか!?」

「無論だ、別に教えてやる義理は無いが……丁度良い。あれを片付けてくれるなら教えてやろう」

そう言うと、空を仰ぐ。二人も釣られて顔を上げると、そこには薄曇りの空に点々と散る星。それを遮ろうとする漆黒の雲――

「何だあれ……」

「こっち来るよ!」

その雲と思しき何かは陽たちの頭上で方向転換。雨のように降り注ごうとしている。

「後は任せる」

「お、おい!消えた……?」

一言だけ残すと、大蛇の姿は何処かへと消え去ってしまう。残されたのは静寂、いや、羽音。不気味なほどに大きい羽音だ。

「見つけたぞ白蛇神!今日こそ貴様の魔力を……」

「あ、兄貴!居なくなってるぞ!」

「……なあでもあれってさ」

「どうした弟たちよ。ただの人間……ではないな貴様ら!」

蝙蝠の大群。その先頭に横一列に並ぶ少しだけ大きめの人語を介する三匹。

「ここで会ったが何年目かは知らんが!お前を捕らえれば今回の失敗も無かった事に出来る!大人しく敗れろ!」

「『永遠の闇』か……こんなところまで!雪那さん、下がって……は要らないですよね」

「そうそう。戦えるんだから!」

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