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〜龍と刀〜
瀧に潜むはU
練られた魔力は水を高圧の刃に変え一直線に滝を割ろうと突き進む――が。

「居るじゃねえかよ……ほんとに!」

胸の高鳴り。今陽は自身の持てる力の限りで剣技を放った。それが滝に衝突する直前、ただの水飛沫へと還ったのだ。術自体はそれ程強力でないにしろ、陽の持つ素の魔力の量はとても多い。それを乗せた一撃を瞬時に霧散させる力を持っている相手が、居る。
身構え、次の行動を待つ。雲の切れ間から差し込む月光が反射し、その容貌がうっすらと明らかに。滝の半分程度はあろうかという巨体の影。他の動物とは違いすらりと伸びるその体。

「何用だ」

遠雷を思わせる重さと威圧を併せ持った音。抑揚は少なく、怒りなどは感じられない。

「聞きたい事があって来た!」

焦る気持ちを抑える。生唾を飲み込み、相手の次の言葉を待つ。
チラリと覗く血のように赤黒い瞳。どこか気だるげな印象を与える瞳だった。それで陽の姿を確認すると、ため息を吐くようにゆっくりと滝の中から姿を現そうとするではないか。
滝を割って出て来る巨体。蛇のように長い胴体は純白で。その蛇腹には大きな傷。古傷、と言うよりは新しいようで治りかけらしい。生々しいピンクの肉が見えているではないか。見上げるようにして、顔。

「……?」

首を傾げる陽。確かにこれは龍のような風貌であるのだが。少々違うのではないだろうか。そして先程から気になるのは口元でちらちらと出ては消える揺らめく赤い炎。いや、よくよく見ると炎ではなかった。舌だ。二股に分かれた――

「はあ?」

滝壺に悠然と佇むそれの全貌を確かめる為に陽は後方へ走る。

「おいおいこれはねえだろ!……なあ嘘だろ?嘘だって言ってくれよ……」

白銀を取り落とし、自身も膝から崩れ落ちてしまう。それ程までに衝撃的だったのだ。期待と不安に胸を躍らせていたのだが、それすらも破壊する強烈な一撃。

「何だ坊主、神族に向けてその態度は?」

「……」

言葉すら発そうとしない。そんな落ち込みが酷い陽に対して雪那は優しく声を掛けた。

「そんな落ち込まんと……ああ言うとるし失礼になるよ」

「だって、これじゃ……くそっ見間違えた奴許さん……!全然違うじゃねえか……」

服に付いた砂を払い改めて龍族とは“全然違う”種族のものに相対する。

「改めて問う。何用だ」

「はぁ……なんかさーもうどうでも良くなったから帰りたいんだけど、言うぞ。この土地の魔力吸ってるのあんただろ?それ止めろって」

やる気の無い声。全てを持っていかれたらしい。

「魔力?何の話だ?俺はただ傷の療養の為、治療効果のあるこの滝を使っているだけだが」

「ああそうなの。じゃあ解決じゃん、帰るわ」

ここまでやる気が無い陽は学校に居る時と同等か、それ以上だ。

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