〜龍と刀〜
瀧に潜むはT
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――日は完全に落ち、月が支配する闇の世界。陽と雪那は指示通り龍族らしき姿が発見されたとされる山奥へ来ていた。空気はすっかり冷え、肌を切るように冷たい。何より山奥という事で辺りにはうっすらと雪が地面を覆っているではないか。
「さむ……」
防寒対策をしてきた雪那に比べ、かなりの軽装で山に入ってしまった陽は寒さに耐え切れず腕を擦りながら歩いていく。
「なんか貸そうか?」
「いや動けば……たぶん」
「そうは見えんけどねぇ……」
「大丈夫ですよ」
心配はしてもらったが女性から借りてまで暖を取ろうとは思えなかったのか、どうにか意志だけで寒さを吹き飛ばそうとする。
進むに連れて二人の口数も減った頃だ。耳に届く微かな音。
「水……?」
「これは……滝、ですかね。なるほど隠れるには絶好の場所だ」
「そうなん?」
「ええ。龍族っていうのは水気を主の属性として持ってるのが多いらしいんで……それに滝ってのも水気の集まりが良い場所ですから」
音のする方へと今にも走り出しそうになる足を向けながら陽は珍しく饒舌に語る。あくまでもこれらは背中に乗せられている白銀の受け売りなのだが、まさかここで披露する事になろうとは。
「ここに……居るのか……?」
気付かない内に早足になっていたらしく、近くに雪那の姿が見えない。しかし陽にとって今確認をしなければならないのはここに本当に報告にあった龍族らしき存在が居るかどうかだ。目の前には轟音を響かせて落ちる白い滝。これこそまさに龍のような風貌ではあるが、これを見間違える人間は余程錯乱していたに違いない。
滝壺は漆黒を映し、その深さは計り知れない。故に踏み入れる事は危険だろう。更に撥ねる飛沫から感じられるように相当な冷たさを持っているだろう。それだけで十分な凶器となり得る。
白銀の柄に手を掛けゆっくりと抜く。構えは取らず、ただ警戒だけは怠らない。
「白銀……何か、居そうか?」
「感じる事は感じる。しかし、この感じは……」
「いや、それだけ分かれば十分だ――!」
唐突に陽は腰溜めに白銀を構え、周囲に魔力を散らす。ここは得意属性の水気が満ち溢れている場所。否応なしに実力を発揮出来る。
「ちょっと、歩くのはやないっ……?って何を!?」
背後からは漸く追い着いたらしい雪那の声。少々疲労の色があったが、その声はすぐに驚きを現すものに。
「ぶつけた方が、早い!」
白銀の刀身には溢れんばかりの水。頃合いを見計らって渾身の力で振り貫く。纏わり付くそれは、魔力を帯びて高圧な刃へと変貌。水面を割り、本物に負けない程大きな水飛沫を上げながら一直線に滝へと伸びる。
滝に届きそうになった寸前の事だ――
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