〜龍と刀〜
不安要素T
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――目が覚めたら知らない場所に居た。そのような経験をした人間は居るだろうか。あるとするのならばそれは自分の意思によっての移動なのか、はたまた別の意思によって動かされたものだったのか聞いてみたいものである。
今回の場合は後者だった。陽が目を覚ました時、視界は周囲の物が高速で流れていくような状況。寝起きの頭では何が起こっているのか理解出来ず、未だに夢の中に居るのではないかと錯覚してしまうがすぐさま現実世界に呼び戻される。
「あ、起きた?おはよー」
「……」
「なんちゅう顔をしとるん?もうお昼やで」
「どこっすかここ……?」
開ききらない瞼を擦りながらどうにか口を動かす。まだ覚醒しきっていない頭のせいか流れている風景が恐ろしく速い。そもそも自分が座らせられている事にも気付いていないようだった。
「車の中よ」
「……なんで?」
「覚えてへんの?昨日案内するって言ったやん?」
「あー……」
昨晩、雪那にそのような事を言われたような気がする。その頃には睡魔が襲ってきていたので半分以上聞き流していたが。
漸く意識の覚醒が始まり、窓の外に流れている風景が見えるようになってきた。近くには海。それと大きなショッピングモールらしきものも見える。
「買い物、付き合ってくれる?」
「荷物持ちっすか……」
この場合の自分の立場を即座に理解する陽。これも連れ回されて覚えた事なのだろう。だが、ただ夜になるまで寝ているというのもつまらない。せっかくここまで来ているのだからどこかしら動いておくべきだろう。それに最近ではあまりゆっくりと羽を伸ばせるという状況でもなかったのだ。いつも気を張っていて、すぐに対応出来るように。首を回しながら後部座席を見てみるが、白銀や荷物はない。
「完全にオフですか、これ?」
「そうよー。時間になるまで付き合ってもらって、そのまま直行。でも車で行ける限界までやね」
「……夜って具体的に何時ですか?」
「そうやね……あっちに着くのが夜の十二時前なら良いのかな」
信号で車が停まると雪那が指を折って時間を計算する。今言った通りだとすると、その現場に到着するまで残り半日はあるだろうか。
「これから行くとこに移動するのに大体一時間、目的地に着くのに二時間くらいだから半日もないかな」
まるで陽の考えを読み取ったように発言する雪那。もしやとは思うが顔に出ていたのではないだろうかと心配になってきたらしく、顔を擦る。
「これから何するんです?」
「買い物!」
「……女の人ってそればっかりですよねぇ」
陽としては毎回のように歩き回されて、挙げ句の果てには買わされるという事を経験しているためあまり良い思いがないようだ。
しかし雪那は頬を膨らませて反論。
「えー買い物楽しいやん?」
「そうですか……?俺はあんまり好きじゃないです」
「まあまあ、そう言わんと。ほら着いたよ」
どうやら目的地に到着したようだ。埠頭近くの大きなショッピングモールらしい。平日ではあるが、多くの車が停められている。
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