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〜龍と刀〜
デート……!?Y
甘い香りの充満する店内は大繁盛。座っているので人混みとは言わないながらもなかなかに賑やかである。ただその状況下でも苛立ったりしない理由、それが目の前にあるのだ。
この店に行列が出来る要因。名物のパンケーキである。陽が見た事のあるホットケーキと呼ばれる物との比較として、分かりやすいのは厚さである。普段見掛けるのに比べたら小さめではあるが、目測で五センチ程度はあるだろう。
厚みがあるという事は焼くのに時間が掛かる。つまり、それ故の行列だ。
そしてそのふわふわとした見た目と一緒に添えられているのは数種類のカットされたフルーツ。そこに生クリームまで。とても豪華である。

「なるほど、人気が出る訳だな……」

これは女子の心をがっちりと掴むものなのだろう。店の中の大半が女性なのも納得出来る。それこそ、陽の席の反対側に座っている葵を見れば一目瞭然。目をキラキラと輝かせながら携帯を手に写真を撮っている。これだけ楽しそうにしてくれるなら付き添って来た甲斐があったというものだ。

「気は済んだ?」

「……ハッ!?ごめんなさい、つい……!」

「いや楽しそうだから気にしてないよ」

他人の表情を見て楽しむのもなかなか良い事ではないだろうか。

「ど、どこから食べましょう!?」

「言われてもな……好きに食べなよ」

「じゃあいきます……おぉー!めっちゃ柔らかいですよこれ!見てください!ほら!」

「テンション高いなぁ」

端の方にフォークを挿し込むと、まるでフォークの重さだけで沈んでいくようだ。相当柔らかいのだろう。それを驚きと光悦の表情で見詰める葵。生クリームを乗せてから口に運ぶ。すると言葉通り、溶けた様な表情に。

「ん〜!」

ニコニコと笑顔を絶やさずに手を動かす。相当美味しいのだろう。それを見てから陽も一口食べてみる事に。別に毒見させたつもりはないが、甘いのがそれ程得意ではないので遠慮がち。生クリームではなく、カットされたフルーツの中からリンゴを突き刺して食す。

「お、美味い」

パンケーキ自体にはほとんど甘さがないためか、フルーツの酸味と甘味を引き出していている。口当たりも軽く、食べやすい。

「ですよね!来て良かったー!」

「俺もこんなに喜んで貰えるなら良かったよ」

「それはもう!めっちゃくちゃ喜びますよ!?」

今にも席から飛び上がりそうな葵を何とか宥める。この興奮すると急激にテンションが上がる部分はやはり兄に似ていた。可愛いから許せるが、これが兄だったら陽はどうしていたのだろう。想像は容易い。実力行使である。

「それにしても、葵ちゃんは美味しそうに食べるよね」

「へ?」

「うん、良い事だ」

「そ、そんなに見てたんですか……!」

その一言で葵の顔が何度目か分からないが真っ赤に変わる。陽の言葉はどうやらかなりの破壊力があるようだ。それを本人は自覚していないのが厄介である。

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