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〜龍と刀〜
デート……!?X
行列に並ぶという感覚は、正直に言えば理解し難いものだ。現に並ぶ事が好きだとはっきり言い切れる人間は少ないはず。しかし、ほとんどの人間は多数での行動を好むのは事実であるし、行列が出来ているという事は、つまりそこには期待値の高い何かがあるかもしれないという事だ。その中身が実際にはどうであれ、本能的にそう感じてしまうのだろう。

「良く並べるよなぁ……」

言いつつ陽も付き添いとして並んでいるのだが、なかなか進まない。しかしここで苛立ってしまうと葵を怖がらせてしまうだろうという良心からか、どうにか抑えている。それに並んでいるだけなのに楽しそうにしているものを邪魔する程無粋でもない。故に、愚痴は漏らしてもそれ以上は言わないように気を付けている。

「それより俺はこの先に何があるのかをそろそろ知りたいんだけど」

「あれ?言ってませんでした?」

「うん。聞いてないな」

この行列が一体何なのか、白い店の外観だけではどうしても判断出来ない。もし推測するとしたら材料が少ないだろう。並んでいるのは女性が多いだろうか。残りの情報は、見付かりそうにない。

「パンケーキのお店です!この前友達に教えて貰ったんですけど、予定が合わなくて……でも一人だと入り辛そうじゃないですか」

「まあ……これだけ大勢並んでたらな。他人の目が気になるよな。ところでさ」

一定の間隔で進みつつある列の中、陽は葵の言葉から出た単語に質問を投げる。

「何ですかー?」

「俺テレビで見た時から知りたかったんだけど……パンケーキとホットケーキは別なの?どう見ても同じじゃん?」

「!?た、確かに……!」

「気にしてなかった上に知らなかったのか……」

ここに来るからにはその疑問が解けるかと思ったらしいが、どうやらお互いに知らないらしい。だが、ここで調べて実は同じだという結果が出たとしよう。それは何か違う気がするではないか。知らないまま、別物であると仮定して食した方が楽しめるのではないかと。
すぐに調べる事が可能な世の中。まずは実体験を大切にしてみるというのも悪くは無いだろう。

「食べれば分かるかも……!」

「そうだな。そうだと良いけど」

「ですねぇ……陽さん、ちょっと気になるんですけど、今日ここら辺人少なくないですか?」

周りを見渡しながら首を傾げて言う葵。言葉通りなのか、どうか陽には定かではない。だから返答に困ってしまう。ぱっと頭に浮かんだのはこれだった。

「寒いからじゃないか?俺だったら外に出たくなくなる」

「うーん……そういうものですかー」

「ほら、進んだよ」

不思議そうに考え込もうとしていた葵の背中を押して進ませる。あと少しでようやく店の中の入れそうだ。近付くにつれて甘い香りが鼻腔を擽る。朝食もしっかり摂ったが、それでも食べられそうだ。

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