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〜龍と刀〜
デート……!?W
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それから陽と葵は電車を使って移動する事となった。話によると、どうやら都心部に行ってみたい店があるらしい。だが、友人とは予定が合わず中止になっていたようだ。一人でも行けない訳ではないのだろうが、誰かと共有したいのだろう。
電車での移動は約三十分程度。陽はあまりこの都心部には来ない上、このような人混みは苦手中の苦手である。しかしここまで来て逃げるのもどうか。

「あ、陽さーん!こっちですよー!」

そんな人混みを諸共せずに突き進んでいく葵。この光景を陽は昨日、その目で見ていた。そう、兄と似ているのである。さすがは兄妹。
波を交わしながら着いて行く。そもそも陽は人混みが苦手なだけで、交わせない程鈍いのではない。この程度の混雑で音を上げてしまうとしたら、それは今まで何をやって来たのかと言われてしまうだろう。故に誰にもぶつかる事なく葵の隣へと到達。駅を出ればそれなりに人は減っている。
目の前のロータリーには複数のバスやタクシー、そして目を引くのは電飾だらけの大きなクリスマスツリーだ。

「おっきいですねー!」

「そうだな。クリスマス用の飾りなんだろうけど」

近くで見ると、かなりの大きさがある。首を曲げて見上げないても全景は拝めない。元々ここに植えられていたのだろう。周囲の都会的な風景にも不思議と馴染んでいるのはこの木の持つ不思議な存在感だろうか。

「これ、夜見たら絶対綺麗ですよね!?」

「んー……時間あったら今日見てみる?予測よりも行動した方が良いし。それに冬だし日が落ちるのも早いだろ」

「は、はい!もちろんです!」

意外にも、陽からの誘いだ。これを断る理由は無い、と心の中でガッツポーズ。

「俺もどうせ暇だしな……こっちはほとんど来ないから分からないし」

暇とは違うのかもしれないが、それなりに時間もある。それに付き合うと言ったのは陽なのだ。自分で出来る範囲なら何かしてあげたかったと言う。

「それで、行く場所は分かってるの?」

「それはもう!昨日調べて覚えてきましたので!」

「さすがだなぁ……兄とは大違いだ……」

やはり比べてしまうのだ。昨日の兄と。自分の目的の箇所だけをしっかり覚えておき、他の事は考えずに行動する兄と、正確に道順や電車の時間までも計算する妹。どうしてこうも差がついてしまっているのか。
駅から十分程度、周囲の店もしっかりと確認しつつ二人は目的の場所に到着したみたいだ。

「こ、これは……」

「うわ〜!予想通りです!」

そこで陽は半眼になりその人々の状態を睨む。とても嫌そうな顔だ。対して葵は目をキラキラと輝かせてそれを凝視。余程楽しみにしていたのだろう。
二人の目の前に出現したのはこれまた陽の苦手な行列だった。

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