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〜龍と刀〜
デート……!?V
陽が玄関に向かうと、既に仕度を済ませていた葵がそわそわしながら待っているではないか。
白を基調とし、全体的にふわっとした感じが年相応で可愛らしい印象だ。しかし、この時期にフリルのミニスカートは寒くないのだろうかと疑問に思う。

「おはよう葵ちゃん」

「おはようございます!あの後は良く眠れませんでしたよ!」

「そこは俺に寝られたか聞くんじゃないかな……よし、それじゃあ行こうか」

さすがは陽である。さり気無く葵が服を見せるような体勢をしていたのにも関わらず、一切触れる事なく自身のスニーカーの紐を結んで立ち上がる。

「それで今日はどこ行くんだ?」

「ちょっと遠くまでなんですけど、良いですか?」

「ああ。別に大丈夫だ」

「やった……!それじゃあ行ってきまーす!」

しかし葵も、陽と出掛ける事が出来るという嬉しさと興奮で服の事を忘れているのか、無邪気に喜んでいる。この忘れっぽい部分は血筋なのかもしれない。

「うわ……寒いぃ……」

先頭を切ってドアを開けた葵。外気に晒された瞬間にこれである。やはりミニスカートは失敗では無いだろうか。

「大丈夫か?」

「陽さんは平気なんですか……?」

「今日はそこまで寒くないかもな」

ドアを後ろ手で閉め、ようやく出発だ。ふと、陽はここである事を思い出して立ち止まる。それは昨日、ここへ来た時の事だ。ここは七階。そこまで来るのにどうやったか。

「あー!まだエレベーター直ってないの?最悪だよぉ」

そうだ。エレベーターの故障で階段を上がって来たのだ。陽の体力ならその位どうって事無いのだが、葵はまだ中学生でしかも今日はおめかししている。靴もヒールが高め。しかし、ここで履き替えてしまうと服に合わないという葛藤。

「どうする?」

「い、良いです!このまま行きましょう!きっと並んでるでしょうから……」

「……並ぶの?」

「大丈夫です!私が一緒ですから!」

相変わらず良く分からないが、陽としては並ぶという単語の方が気懸かりで仕方が無い。鍵の掛けられていない非常階段。上階に住んでいるとこういう事が起こったときに面倒だというのがはっきり分かった。

「転ぶなよー」

「この程度、大丈夫です……!」

一段ずつ慎重に降りていく葵はとても可愛らしく見えている事だろう。異性として、ではなくあくまでも年下の子供として、というのが陽の見解であるが。
しかし、そんな事を気にしていられる程余裕は無い様で。

「ほっ……!」

「危なっかしいな……」

「うぅ言わないで下さい……」

「ほら、俺が前歩くから落ちそうになったら捕まると良いよ」

なかなか進まない葵を見兼ねた陽。颯爽と横を通り抜け、手を差し伸べる。服の事には気がつかなくても危険を予知する程度の目は持っているのだ。しかし、それが気恥ずかしい行動だとは一切考えない辺りもさすがと言って良いだろう。

「ふあ……」

顔を真っ赤にしつつ、それでもしっかり陽の手を握る。

「大丈夫?進むからな?」

(か、かっこいい……!)

この時の葵は今にも暴走してしまいそうな気持ちを抑えるのに必死だったらしい。


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