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〜龍と刀〜
帰路、そして――T
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楽しい時間というものは不思議なほどにあっという間だ。どうしてこの世の中、休みという期間が短く出来ているのだろうか。これには悪意すら感じる。何者かの陰謀かもしれない。だとしたらその張本人を討ち滅ぼしたいものだが、残念な事に誰なのか分からない。
この時期になると日が落ちるのもかなり早くなってくる。既に外は真暗闇だ。街灯だけが輝いていると思いきや、クリスマス用のイルミネーションが煌びやかに飾られているではないか。

「どうする?ここで解散にしとく?」

ショッピングモールを満喫し、既に駅に到着。後は電車に乗ればすぐに帰れるのだ。しかし、三人共方向は同じ。中島だけが少し多く電車に乗る必要があるだけだ。

「ここで解散だと意味ないだろ」

「そういう意味じゃなくて今日という日を終わりにするかって事だよー」

「良くわからねえな……同じだろ?」

「とりあえず乗らない?疲れたから帰りたいし」

到着した電車に乗り込み、たった一駅なのですぐに降りる事になる。さすがの井上も疲れているのか意外と口数が少ない。無言、という状態ではないのだが。ものの十分程度だろう。次の駅に到着するアナウンスが聞こえた。

「じゃあ僕はこのまま乗って帰るよ」

「え!?降りないの?」

「そもそも朝は井上のせいで降りたんだよ」

「そうだったっけ?そんじゃあ俺らはここで降りるぜ!月曜に課題よろしく!」

「あぁ俺も頼むわ。じゃあな」

三人だと座れなかったので、空いている席へ向かう中島に手を振って二人は降車。すると肌を刺す冷気が襲い掛かって来る。暖房の効いた車内から出た後故に余計にダメージがある。

「うぅ〜寒いなぁ……」

「このくらいでか?」

「寒いの苦手なんだよ……帰って布団潜ってゲームだわ」

「まずその熊どうするか考えとけよ」

そう。井上の背中にはまだ熊が居る。電車の中でも目立っていたが、これはどうしようもない。これからの帰り道でも人目に当たるだろう。

「これなぁ……妹の部屋に投げてくるわ」

「そう言えば妹居るんだったか……ずっと会ってない気がするな」

「そうだっけ?気が向いたら遊びに来いよー」

「時間あったら行くと思う」

過去に何度か遊びに行った、いや連れて行かれたと言うのが正しいかもしれない。そこで井上の妹とも対面した事がある。兄とは違い、しっかりしている印象があった。ただやはりテンションの高さは似ている女の子だったはず。
他愛無い話をしながら駅の出口に。ここからは別ルートだ。

「そんじゃ、俺こっちだから」

「ああ。じゃあな熊男」

「だから熊じゃねえ!」

しかし、後ろを向くとどうしてもぬいぐるみしか見えない。なのでやはり熊で良いのではないだろうかと陽は思う。そして自身も家に向けて歩き出す。

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