[携帯モード] [URL送信]

〜龍と刀〜
騒動の処分
それから数分は経っただろうか。
教師が三人ほど到着して、その場に居た六人をある場所に連れて行った。

支えられながらも多少ふらつく足取り。
支えているのが女子だということも少なからず関わってくるのだが。

「ほら、入りなさい」

一人が入るように促したのは、生徒指導部。あまり来たくない場所だ。

「二人以外は教室に戻りなさい。授業があるのだから」

渋々了解し、無言で教室へと戻る姿が陽の目に映った。

「……それで、どうしたらこんな事になるんですか?」

椅子に座らせられ、教師と向き合う形になっている。
陽は一向に話す気配は無い。言った所で信じてもらえないことは明白だから。

「では、僕が−−」

雹が作り上げたシナリオ通りに話は進み、ものの十分程で終了した。
結論はこうだ。

「龍神 陽、出席停止。氷室 雹は、厳重注意……こう処分させてもらいます」

扱いが全然違う、と思ったが内心どうでも良かった。出席停止だろうが、なんだろうが、もう、どうでも良い。
それでも、どこかに冷静な自分が居てこう言った。

俺は昨日何て言った?
決意した。
じゃあ、昨日の決意ってのはこんな物なのか?
違う。
そうだ、違うのだ。
これは猶予。戦い前に昨日の自分に与えられたせめてもの時間。
どう使うのかで、全てが変わる。
笑うも、泣くも、自分次第なのだ。

「……聞いていますか?」

「す、すみません……」

「もう一度だけ言います。今日は学校が終わるまで、ちゃんと居る事。出席停止が解けたら電話があると思いますので、それに従って下さい」

目の輝きが違っていた。
先程の怒りなどどこへやら。真っ直ぐ前を見つめている。

「失礼しました」

二つの意味を兼ねた一言。教室を出るときの挨拶と、騒動を起こした事についての謝罪。
雹は先に出ていたらしく、気づいた頃にはもう居なかった。

「お前ら……授業はどうした?」

指導部を出た廊下には、戻ったはずの月華と春空が。
井上ならともかく、成績上位の二人がサボっているのはシャレにならない。

「サボっちゃった。誰かさんのせいで……」

「あの、処分とかは……あるんですか?」

「ああ、出席停止、停学だそうだ。当然と言えば当然か……転入生をぶん殴っちまったからな」

白々しく笑ってみるが、うまく笑えない。

「停学って、どれくらいなの?」

「確か、一週間とちょっとだったか。まあ気にする事じゃない。ちょうどやらなきゃならない事思い出したからな」

真剣な眼差しで二人を見る。仕方ないと言いたげな表情だ。

「そうですか。頑張ってください」

「応援する。手伝える事合ったらすぐ言ってね!あ、あと……」

「何だ?」

しばしの間を開けて言った言葉は真実だった。

「ホントは陽ちゃんは悪く無いんだよね。私は信じてるから」

「……私もです。龍神さんが理由なしに怒る訳無いと思います」

陽は少しぽかんとして、ようやく意味を理解したように笑い出した。

「ハハッ!うおぉ……いってえ……傷が開いたっぽいな」

呻きながら脇腹を抑えていると、二人に肩を支えられた。
その後、保健室で肋骨が二、三本折れている事が判明し、病院へ直行した。

教室では雹がつまらなそうに窓から見ていた。

「よく笑ってられるな……!僕の顔に傷を付けておいて。別に良いけど……その分愉快に切り刻んでやるからさぁ……!」

殴られた頬をさすりながら。
狂気の笑みを含んで。

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!