〜龍と刀〜
転入生は美少年!?T
朝のホームルーム。
他愛も無い連絡や、今日の事件についてなどが教師の口から語られ、終わり頃に教師はこう告げた。
「今日から新しい仲間が増える事になった!良し、入れ!」
お決まりのフレーズと、周りのざわめき。
この後、男子か女子かによって悲鳴が変わるのは目に見えている。
戸が開けられた瞬間、清……と静まり返ったと思えば、黄色い悲鳴が教室内に響き渡った。
女子のモノだ。
「初めまして、氷室 雹(ヒムロ ヒョウ)です。今まで外国暮らしだったので、日本について分からない事が多いです。皆さんよろしくお願いしますね」
日本人には見えない長身に、透き通った青い髪、整った顔立ち。
そして、爽やかな挨拶。
誰に向けたでもない、爽やかな笑顔。
彼はまさしく美少年であった。
「氷室、お前の席はあそこだからな。何かあったら周りに聞け」
指し示したのは、陽の二つ後ろ。
陽に対して鋭い視線を送っている。
一歩、また一歩と近付いて来る雹。すれ違いざまに、聞き取るのも苦になるほど小声で話し掛けてきた。
「やあ。早く切り裂きたいね、その体……」
陽はそれを無視するように、そっぽを向く。
「それじゃ、ホームルームは終わり!」
教師が去ると、教室は一気に賑やかになった。転入生への質問タイムだ。主に女子な訳だが。
「(堪えろ、俺!今ここで仕掛けたら周りの被害が大きすぎる!せめて、こいつが動くまでは……)」
頭を抱え、どうするべきかと悩む。
仮に今、雹を斬ったとする。
もし雹がただの一般人で、関係が無かったら?
違ったとしても、雹が周りを人質にするかもしれない。
「どうしろってんだよ……ん、電話か」
携帯を手に取り、ディスプレイを確認する。
幸輔からのようだ。
「もしもし。先輩ですか?」
『うん。いやまさかね〜乗り込んでくるとは……大胆な事をしてくれたモンだよ〜』
乗り込んでくる、というのは雹の事だろう。
確かに大胆だ。わざわざ学校にまで来るのだから。
「どうします?協会に連絡した方が良いと思いますか?」
『いんや、とりあえず一週間我慢してくれい。ボクがその間にデカい仕掛けを作っとくからさ〜』
「仕掛け……?生徒は巻き込まれないんでしょうね」
一番気掛かりなのはそれだ。“仕掛け”が何なのかは全く分からないが、術式であるということだけは推測出来る。
『ソイツの力次第ってトコかな〜。龍神が一人でキツいみたいなら、マズいかも。今回は手伝うけどね〜。一番近いし?』
「適当じゃねえかよ!しかし、一週間か……もうちょい早く出来ないですか?」
『ん〜、本元が帰ってくれば五日で出来んだけどさ〜。予定が一ヶ月長引くっぽいしぃ。悪いけど一週間で手を打ってくれないか?』
舌打ちをして、溜め息を吐く。
「ハァ……分かりました。一週間ですね?遅くなったら、情報料はチャラで」
『了解、んじゃ、頑張れよ〜』
ぷつりと電話が切れ、後方の騒がしさが耳に入る。
声を聞くだけでイラっとし、顔を見ると殴りかかりたくなる。
「龍神、何かキレてる?」
中島が陽を見る。どうも、顔や雰囲気に怒りが表れていたようだ。
「別に、気にするな。それよりゾンビはどうなったと思う?」
朝遭遇したゾンビだ。その後、追跡されている気配は無い。もしかしたら、誰かが倒してくれたのではないかと思ったりする。
「アレか。そろそろウイルスが抜けて、人間になった頃じゃない?……ホラ、来たよ」
「うーっす!いやー遅刻しちまったぜーってどちらさん!?」
「うわ、来やがった……あの時トドメ刺しときゃ良かったな」
やたらテンションが上がった井上が来たせいで、教室中の空気が冷めた。面白いほど急激に。
「氷室 雹です。よろしく」
さっと井上に握手を求める雹。
陽の気に食わない笑顔で。
「お、おう。井上 和真だ。よろしくな!」
ガシッと手を握っているようだった。
「ちなみに、そいつがこのクラスで一番頭悪いんだよ」
「何だよ!?関係ないだろ!」
クラスの一人の女子が事実を告げる。周りは大爆笑だった。
陽以外は。
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