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〜龍と刀〜
浮ついた空気U
二人が去った後、幸輔は糸が切れたように後ろへと倒れ込んだ。逆に今まで眠そうに揺れていた陽はぱっちりと目を開き、辺りを見回している。

「あ〜さすがにこれは辛い物があるね……徹夜なんだよ〜」

「どういう、ことですか……?」

寝癖だらけの頭を抑えて直そうとしているらしいが、なかなか強い。諦めて話を聞く体勢に。

「実はね?昨日……今日の深夜にあの黒い騎士、アスラと一戦交えて来たのよ〜」

「……は?」

倒れて天井を見つめたまま、他愛無い会話の如くぽつりと呟く。その事に一瞬頭が追い付かない陽だったが、すぐに理解する。

「っ!?いきなり何を言って……!」

「言葉通りさ〜。うちの流派としての正式な情報収集兼、人名救助かな?結果は全然奮わなかったけど……」

「と言うかいつの間に……全く気付きませんでした……」

「あはは〜だって元々龍神は眠りが深いみたいだし?そこに術を上乗せしたら起きないんじゃないかな〜ってね。見事に今の今まで掛かってたじゃない?」

そう。陽がいつもの倍以上に眠たそうにしていたのは、幸輔の魔術による物だったのだ。

「でもやっぱりいきなりっていうのは辛いね〜。しかも前に使った仕掛けも気付かれて壊されちゃったしさ〜?大変だったんだよ〜」

「仕掛け……探知かなんかですか」

「まあそんなとこ〜。探知だけじゃなくて、ついでに召喚もくっつけて対応出来るようにしたのさ〜」

言葉から察するに、幸輔自慢の術式だったらしい。発動はしっかり出来たがそれだけでは成功とまでは言えないのだ。しかも収穫と言える物が無い。

「でもしっかりと、リベンジさせて貰うよ。じゃないとうちの創始者が泣いちゃうからね〜」

おもむろに腕を上げて拳を握る。珍しく闘争心に燃えているようだ。

「それで何か新しい情報とかは?」

「ナシ」

「即答かよ……」

「今回ばかりはそっちは多めに見て欲しいな〜。ただ、あの術式が通用したって事はだよ?改良を加えればもっと高度な探知が出来るって訳だ〜。よっと」

反動をつけて軽々と立ち上がり、いつもと同じ飄々とした笑顔を陽に向ける。しかしその表情には、やはりどこか力強さを秘めているようで。

「とにかく、ボクらもアイツとの実戦経験を積めたのは収穫だね〜。あとはじっちゃんが協会に通達して、対策を大々的に講じてくれれば嬉しいかな」

「そこはしっかりしてるでしょう。御門の頭首より真面目な頭首を見た事が無いんで」

少し自虐的だが、これが本音なので仕方がない。陽然り十六夜然り、どこか適当さが目立つ人間が多かったりするみたいだ。

「そだね〜。そんじゃまあ詳しく話してると時間が無くなりそうだし……学校行かなきゃね〜」

「……ぁー急に眠気が」

「悪いけど、今日はサボらせる訳にはいかないんだなこれが。いつもならボクもサボったけど……二人に任されたしね〜」

学校という単語を聞いた途端に全てのやる気を失ったかの如くうなだれる陽を無理矢理にでも動かさなければならないのだ。さすがに約束は破れないという精神がある。

「ここは観念してくれるとありがたいな〜」

「ん……なら朝稽古兼ねて一回どうです?」

不適に笑みを作る陽、これに対し幸輔は−−

「ははは〜。時間あるし、一回なら問題ないね〜。でも、かなり手加減よろしく〜」

−−勿論乗る。体は動かすに越した事は無いのだから。

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