[携帯モード] [URL送信]

〜龍と刀〜
裏と裏V
激突は突如として起こった。
晴れた風の中からは漆黒の一閃。空気を裂き、音と共に敵を断つ。
周りで待機していたはずの『御門流』の弟子たちは一撃の下に切り捨てられ、鮮血を散らす。

「なるほど……探査の魔術ですか。私が気付かないとは……」

悠然と翼をはためかせながら地へと降り立つアスラ。その鎧にはやはり何ら傷も与えられていないようだ。

「あれだけの力を込めた式紙ですら届かないのか。さすがと言った所か」

郷一が顔をしかめ、散った弟子たちに視線を向ける。しかし、その視線はどこか感情が余り籠もっていないように見えるが。

「だけど、探査には見事引っかかってくれたよ〜。正直イラっと来たから、無理矢理飛ばしてみたんだよね〜」

「つまり、あれも完全には魔術を遮断する事は出来ない、とも言えるか」

「言えなくもないけど確証は持てない、かな〜?龍神情報によると、常に障壁張ってるみたいだし〜」

間延びした喋り方に戻ってはいるが、殺気はそのまま。腰の辺りからクナイを数本引き抜き、指に引っ掛けてくるくると回す。

「ふむ。ならば“蒼風一陣”(アオカゼノタチ)で様子見を行おう」

「承知〜」

ふ、と音を立てずに狼男の目の前から二人の姿が忽然と消えた。足音も、声も、気配も、そこに居た痕跡すらも。

「消え、た……?」

狼男は持ち前の獣族の感覚をフルに使って二人を捜す。だが、やはり見付からない。隠れようにもここは一面雪が覆い尽くすだけのただの平地。木々も無ければ、当然身を隠す物などあるはずが無い。
すると、突如としてアスラに向けてクナイによる攻撃が四方八方から加えられる。
それをその場から一歩も動く事なく弾き落とし、辺りに警戒。しかし、追撃の気配は無い。

「……」

兜の奥、眼光鋭く周りを射抜くが、やはりトリックが分からなかった。だがサーベルを抜こうとはしない。まだ二人を自身の敵として認めていないのだ。
すると、今度は上下からクナイが飛び出す。もちろん腕を振るだけで払い、真逆の方向へと返すが、虚しく地へと突き刺さるだけだ。
散らす火花は雪と混ざり合い、何とも不思議な光景を垣間見せる。
似たような攻撃が二、三度と続くに連れて、速度が増していく。飛び交うクナイの数もだ。
一点に留まっていたアスラも次第に体勢を逸らすようになり、翼を仕舞い地上へ効果。柔らかい雪の上に甲冑の脚を着け、飛来する物を舞うように去なす。
しかし、アスラの着地の瞬間を見逃さなかった忍二人は虚空から急に出現、その足元へ手早く魔術を構成・発動をする。

「“縛”……!」

低く嗄れた、だがとても力強い一言が発せられると、構成された魔法陣の周囲から雪が幾条もの蛇となってアスラの黒い手足、体へと絡みつく。

「これは……」

「説明するまでも無いだろうけど、『御門流』捕縛術の内の一つさ〜。そう簡単には抜けて欲しくないね〜」

相変わらず間延びした声に、どこか疲労感のようなものが混じっている幸輔。

「我々の目的は倒す事では無い。何故なら我らは−−」

アスラの眼前に立ち、鋭く睨み付けながら言葉を放つ。

「−−裏方だからな」

自分達の仕事を全うする。それが彼ら『御門流』の信念だ。

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!