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〜龍と刀〜
望む事なら平和をT
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−−翌日、午前。
十六夜は一人街中を歩いていた。勿論和服に木刀を携えるという非常に目立つスタイル。更に首には真っ赤なマフラーを巻いているのだ。しかし周りの人が視線を向けないのは、雰囲気が怖いからだろう。
そんな十六夜がクリスマスで浮ついたこの地を歩いている理由は簡単。家族へのプレゼントを探すためだ。

「今年は何にするか……被らないのは絶対条件だが」

相変わらずタバコをふかしながら歩みを進めていく。アクセサリーや食べ物類、思い当たる物は全て自分の目で確かめて納得のいく物を渡したい。どんなに他人からは恐れられる見た目なのかもしれないが、根本的にはそういう人間なのだ。
しかも最近は京都と蓮乃を往復するという事が多く、家に居られる時間も少ない。なので今回に限り『金鳳流』の弟子たちにも何らかのプレゼントをしてやろうという魂胆もある。

「浮かれた気持ちにはさせたくは無いんだがな……たまには労うのも良いだろう」

煌びやかに装飾された街並みに異色を放つ十六夜。その後ろから迫る者が居た。
それに気付かない十六夜では無いため、商品に向けていた視線を鋭くし、いつでも戦闘に入れるように左手をだらりと垂らす。周りに纏っていた雰囲気が一層濃く強い物になったのか、十六夜の周囲からは人気が消えていく。

「俺様を追うとは良い度胸だ。誰だか分からねえが、誘い込むか」

歩調変わらず進んでいく。目指すは先は近場でそこそこ壊しても大丈夫そうな場所。前回の襲撃でまだ完全に直していない建物だ。
ビルが織り成す裏道を何本か入っていくと、すぐに目当ての建物に到着。運良く今日は作業員も見当たらないので不作法に侵入する。
ビニールシートに覆われた外壁、所々ヒビの走る鉄骨。真新しいコンクリートの匂いに混じる未だ微かに残った焼け焦げた匂い。戦闘の記憶は人々から消されてはいるが、形跡はしっかりと爪痕を刻んでいた。
十六夜がその中ほどまで歩くと、ここまで静かな空間のため追跡者の足音もしっかり聞き取る事が出来る。

「追跡する割には気配も、足音すら消さないのか。貴様は何者だ?」

臨戦態勢へ。後ろを振り向く事すらせずに言葉だけで威圧を掛ける。場の空気が唐突に熱く、鋭くなった。チリチリと刺すように痛む。

「いやはや……忘れられてるのかい?オレは?」

この雰囲気で軽そうに口を開いた追跡者。どうやら十六夜を知っているような風だが−−

「忘れているようなら名乗ってやろう」

十六夜はその言葉でようやく振り向き、相手の姿を確認する事に。
足下から革靴、スラックス、真っ白なシャツに灰色のコートと黒い中折れハットという出で立ち。十六夜に負けず劣らず珍しい風貌だ。

「昴 詠士(スバル エイジ)。れっきとしたお前の知り合いだぞ?」

−−そう名乗った詠士はハットを脱ぎ、顔を晒す。

「貴様か……これまた珍しい奴に出会したな。それで、何の用だ」

さすがと言うべきか、例え知り合いだったとしても殺気は解こうとしない。

「ちっとばかし用事があってな−−」

流れるような動きで腕が腰元へ。

「−−倒れてくれやしないか?」

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あきゅろす。
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