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〜龍と刀〜
夢の中]V
「第一部隊、侵入を開始しました」

飛んできたアスラがマーワルドの肩に留まり、耳元で囁く。それを聞いてこれからやるべき事を頭の中で再構築。

「それじゃあ俺たちも行くとしようか」

「そうね。敵の頭を押さえるだなんて、簡単よ」

「油断は禁物だと思うけど……すぐに終わらせてしまおう!」

小高い丘を一気に駆け下り、領主の屋敷のすぐ側へ。まだ騒がしくなった気配が無いということは侵入していった部隊が上手くやってくれているのだろう。

「人の気配すらないな……」

「まだ寝てるとかね」

「領主はともかく、警備するべき人間が寝ているとは思えない……中に入ってから確認するよ?」

「さ、皆もしっかり付いてくること!後ろの警戒も忘れずに、ね?」

リーザの一言に、彼らは真剣な眼差しで頷くのだが、マーワルドの言葉はほとんど耳に入れていないみたいだ。あからさますぎて挫けそうになってしまうが、何とか受け止める。
そんな時、ようやく向こうの方から爆音と騒ぎ声がやって来た。注意を引き付ける作戦はこの時点では成功だ。

「今の明らかに爆発音だったけど、火薬なんてあったんだ……」

「当然よ。しっかりくすねてきたわ。大砲ごとね」

自慢げに語るリーザ。あまり感心出来たものでは無いが、反乱を企てるのにそんな流暢なことは言ってられない。

「それじゃ、今度こそ突入!」

一声。
澄んだ高めのボイスを上書きするように男たちがガラス張りの木窓を突き破って侵攻していく。ガラスの破片で傷付くのなんてお構いなしに。

「私たちも!」

颯爽と窓枠に飛び乗り、なかなか動かないマーワルドに手を差し伸べる。騎士甲冑に包まれた右手によって、引き上げられた。
シャリ、と音を立てる足元。あとで靴裏に刺さったガラスを取り除かないとと考えつつマーワルドは、アスラとリーザを連れて走り出す。

「領主の居場所はどこだか分かってるのかい?」

走りながら質問を投げ掛けるマーワルド。前方からは警備の者と見られる男が数人、武器を持って仁王立ちしているではないか。

「え?そんなの−−」

リーザはそれを確認するや否や拳を構えて進んでいく。しかも、自分よりも速く。

「−−適当におっきい扉の部屋を探せば大丈夫よっ!」

轟音と共に、ガントレットで固められたリーザの拳−−まさしく鉄拳−−が一人の顔面に突き刺さる。男が吹き飛ぶ前に拳を戻し、男が取り落とした槍を奪って残り二人を貫いた−−あくまでも戦力を削ぐためなので、太ももだ−−。そして、その槍を引き抜こうともせず進もうとする。

「ど、どうして帝国兵がこんなとこに……痛っ!!」

「聞いても教えることは無いの。これに懲りたら別の職を探すことね……戦いにおいて大切なのは非情とは言うけど、私には難しいわ」

それだけ言うと、意識を保っている男の頭を蹴り上げた。

「気絶させただけ。行きましょ」

先程の明るさやらが嘘のように、今の彼女は冷静だ。その姿はやはり騎士のあるべき姿だと、思った。

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