〜龍と刀〜
夢の中]U
「それで早速なんだが、どうも奇襲にしては人数が多い。これは減らさないと」
「それは襲撃組と物資の運搬組、逃走経路の確保をする組に分けたの」
「いや、だとしても多い。これじゃあ手の内を晒しているのに近いんだ……だからこうさせてもらうよ?」
マーワルドの頭の中では作戦の構図が描かれている。人数、体格、武器の数、士気、それらを最大限に活かすには少ない人数での決行が望ましい。
「まずは頭を押さえる。基本かもしれないけど、リーザに聞いた限りそれが無かった。そしてこれは俺とアスラ……リーザだけで行う」
最後にリーザを加えたのは、彼女がそういう視線を送ったから−−元々女性に見られたりするのに耐性が無いというのも理由の一つだ−−。
「俺たちが制圧している間……身軽さに自信がある者、もしくは他薦でも良いから前へ。それと腕力に自信がある者も数名必要だな」
「それは何に使うのか聞いても良いかしらね?」
「簡単だよ。物資も欲しいなら身軽な人に運んでもらい、追っ手がいるなら屈強な人が守りながら戦う。そして、終わったら散って逃げること」
「一気に捕まったら大変なことになるからね。周りのことも考えて行動しなさいって訳して大丈夫?」
確かにその解釈で間違いは無いのだが、いかんせん軽薄では……とアスラは心中で呟いたが声には出さない。今のところは彼女らにはただの−−かなり力の強い−−鳥で認識されているだろうから。
「とにかく作戦の予想終了時刻は完全に日が昇るまで!それまでに皆さんは撤退して町の外の……小高い丘に集合していることにするわ!」
マーワルドの号令には快く従わない者も大多数居たが、リーザの命令は声を張り上げて応える。仕方ないとは言え、こうも差があるとやるせない。
「指揮権は俺にあるはずだけど?」
「この町にずっと居座るつもりは無いの。それに関する詳しい話は後からにしましょう?時間は止まらないのよ」
「それはそうか。ではこれより作戦を決行しようと思う!俺の指示は聞きたくなきゃ聞かなくて良いが……失敗するとリーザだけじゃなく全員に影響が出るんだってこと、忘れないでほしい」
大勢が、その言葉を背中越しに受けながら退散していくのを見送ると、その場に残ったのは僅か十数名。一応言いたいことは伝わっているみたいなので良しとしよう。
「言っておくが、俺たちはお前を認めたから動く訳じゃあないんだ。彼女が先頭に立っているからこそ、戦う」
昨日マーワルドたちに食ってかかった男が声を上げる。そう言う彼だったが、見据えているのは自分の進むべき方向。
「彼女は余程慕われているみたいだ……俺もそうなれるなら少し頑張ってみようと思う。あんたらはそれを横目で見ていれば充分だよ」
腰に差したサーベルを引き抜き、目標である領主の屋敷へと切っ先を向ける。自分の号令が効かないのは体験済み。リーザに合図して進軍を開始。
「さあ、始めるわよ!進め!」
こうして歪ながらもマーワルドの指揮下による小規模の戦闘が始まった。
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