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〜龍と刀〜
夢の中Z
王都の壊滅。彼女の口から出たのはそんな大言壮語。冗談にもほどがある。

「一度聞いたからには、逃がす訳にはいかないの」

馬鹿馬鹿しく思ったマーワルドが反転して扉へ向かおうとすると、複数の男たちに囲まれてしまった。その誰もが目つきが鋭く、屈強さを感じられる。

「あなたに与えられた選択肢は二つ。一つは私たちに協力する事、もう一つは……」

どこかで剣を抜く音が聞こえた。それだけでもう一つの選択肢については理解出来る。
残念ながら、ただの人間であるマーワルドにはこの人数を相手にして切り抜けられる程の技量は無い。元々動くのは苦手なのだ。

「……勝手に引きずり込んでおいて、それは卑怯なんじゃないか?第一、何故王都を壊滅させようとするんだ」

「知らないなら教えてあげる。前王はね、毒殺されたの」

まるで至極当然のように発する彼女。驚いているのはマーワルドたった一人だけ。

「正確にはらしい、が付きますけど」

「私がそう言っているんだからそうに違いないの。それに君だって何か確証があるからこの情報を漏らしたりしてないのでしょ?」

「さすが、良く見てますね……」

眼鏡を掛けた男が付け加えたみたいだが、その発言すらも吸収されてしまう。この場での彼女の地位はきっと高いのだ。そして、指導者としても信頼を集めている、この少ないやり取りで掴み取った事。

「らしいでも何でも良いから俺にちゃんと説明してくれないか?じゃないと強攻策を取ってでもあなたたちを突き出す」

「はっはー!そんな刃の潰れた剣一本で何をやろうと言うんだぁ?ここにいる屈強な戦士たちを全員相手に出来るのか?」

そんなのは決まっている。出来る訳がない。鞘に収まっているはずの剣についてまで見破る相手に勝算などなかった。
だが、そんな事を言ってはいられないのだ。

「……出来るさ。俺とアスラなら」

「そんなはったりが通用するとでも−−」

「はったりだと思っているなら、試してみるか?」

肩で大人しくしていたアスラに目配せすると、アスラは目一杯翼を広げて、一度だけ羽ばたいた。
巻き起こる強烈な風は目を眩まし、奥にあった酒の詰まったビンを全て破壊する。その一瞬の出来事に男は目を丸くしているだけ。少し遅れて理解したらしい。

「おもしれぇじゃないかぁ!デカい戦いの前の肩慣らしとさせてもらうぞ!」

腕を置いていたテーブルを弾き飛ばして立ち上がる男。座っていた時にも分かっていたが、恐ろしい程体格が良い。太っているように見えるが、あれは筋肉だ。
あんな腕で殴られたらひとたまりもないだろう。

「そろそろ止めなさいよ。みっともない……それに今ので彼の力は証明されたでしょ?ならこちらに引き込むまで」

「あなたは俺の言った事を忘れたんですか?ちゃんと説明しろ、と。でないとこんな組織潰します」

「分かったから落ち着きなさい。二人きりでみっちり説明してあげるから」

誘惑するように視線を投げる彼女だったが、マーワルドは動じない。人間の観察は得意だからだ。
何か企みがあると見破れた。

「さ、付いて来て」

店の奥へと歩く彼女の背中を追うように、マーワルドも歩き出す。未だに無くならない殺意を持った眼差しが当てられているのに内心冷や汗をかきながら。

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