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〜龍と刀〜
夢の中Y
町はとても賑わっていた。まるで祭りでも行われているのではないかと思うくらいだ。
仕事帰りなのか数人が外で集まって食事をしていたり、せっせと走り回っている少年がいたり。
しかし、裏を返せばこの活気は永らく生きてきた種族たちの生活を蝕んで生まれたもの。全てを返す訳にはいかないが、ほんの少しぐらいなら、とマーワルドは思う。

「そうも行かないのがこの世界の現実なんだよな……」

薄闇が迫って来た頃、何の当てもなく騒がしい町を歩く。
そんな時、ふと市壁で出会った女性騎士の事を思い出した。確か最後に何かを囁いていたはずだ、と。
しかし、正確な物が思い出せない。

「ア……何とか、だったかな?全然思い出せないや」

頭を掻きながら進む。考えながらも周りをしっかりと見て歩いて行く彼の頭上で、アスラはどう伝えるべきかと悩んでいた。

「私は覚えているのですが……あのような人波の中で喋る訳にもいきませんし……」

彼女が口にしたのはアライムという単語。

「む、あれは……」

突き当たり。マーワルドの視界に飛び込んで来たのはアライムの四文字。
粗雑な木の板に、適当に書き殴られた文字を見つけた。雰囲気からして酒場だろうが、やけに静かで周囲に人影が見当たらない。まるでこの一画が隔離されているような、そんな印象を与えられる。

「主、ここは何やら危険な気がします……」

「アスラか……実は俺もそう感じてたところだ。だけど、お前が居てくれるなら切り抜けられると思う」

「その根拠はどこに?」

肩に降りてきたアスラに笑いかけ、自身の胸をトントンと叩く。

「もちろん、直感に決まってるだろ相棒?」

「言うと思っていましたよ」

「だったら聞くなんて野暮な事しなくても……さて、行くぞ」

これもまた乱雑に作られた扉だ。押すのに一苦労しながら開け放ったそこは、例えるなら無法者の住処。通りで人が近寄らない訳だ。
複数の殺気を込められた視線がマーワルドの体へと突き刺さる。感じた事のない無言の重圧に、嫌な汗が背中を伝う。

「あら、遅かったじゃない」

不意に上がった明るい声に視線がマーワルドから声の主へと移る。

「レディを待たせるなんて男性としてどうなのかしらとか色々と言いたい事はあるけど、まずこっちに来てくれる?扉を閉めて、ね」

言われた通りに扉を閉め、一歩を踏み出した。キシキシと軋む床は頼りなく、いつ壊れるか分からない。
薄暗い建物内に充満するのは酒の臭いと強い殺気だ。あまり長居はしたくないのだが、そうも行かないらしい。

「あの、ここは一体……」

「良く聞いてくれたわ。ここはアライム……そして私たちは王都を壊滅させるために集った戦士よ」

「王都の、壊滅……!?」

どうやら無理矢理奇妙な舟に乗せられてしまったみたいだ。引き返すのは、ほぼ無理だと考えるのが賢明な判断だろう。

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あきゅろす。
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