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〜龍と刀〜
夢の中X
「そこで止まれ」

帝国兵の内の一人が、ジーニーの荷馬車の目の前で制止をかける。それに従い、手綱を引く。

「検閲を行う。各人は荷馬車を降り、持ち物を見せろ。不審な物、行動が発見された場合、帝国の法によって裁かれる」

「珍しいわね。商人さんが剣士を荷馬車に乗せるだなんて」

「おい、私語は慎め。今は仕事中だ」

騎士甲冑で全身を覆っていて分からなかったが、どうやら一人は女性らしい。
マーワルドとしてはこちらの方が珍しいのだが。

「持ち物は……紙にペン、砂、金貨や銅貨が数十枚。といったところね」

「ん?どうか、しましたか……?」

視線を感じ、というよりまじまじと見つめられていたマーワルドは少したじろぎながら振り向く。兜の向こうに垣間見えている瞳は明るい緑。

「とても良い男だから気になってね。……アライムでまた会いましょ」

その言葉だけを呟き、彼女は仕事をするために離れてしまう。
事態を理解出来ずに呆然と立ち尽くすマーワルド。

「今、なんて……ちょ、ちょっとぉ!」

「どうしたんだ我が親友。まさか今の女性騎士に心を奪われてしまったのか?確かに、声は高くて美しい印象を与えてもらったがな」

「別にそういうんじゃ無いんだけど……」

颯爽と荷馬車の荷物を検閲するために戻った彼女を横目で見るが、何ら変わったところは見受けられない。

「特に怪しい物は積んでいないな。町の中でも騒ぎを起こそうとするのではないぞ。何せここは王の庇護下にあるのだからな」

そんな説教じみた事を貰い、ようやく二人は町に入る事が出来た。

「まったく……大事な商品に傷でも付いてたらシャレにならないぞ?あんなにペタペタと……」

「ふぅ。アスラも回収出来た事だし、ここからは別々に動くかジーニー?」

「何をつれない事言ってんだよ!こんな地で会えたのはきっと神の示し合わせさ!少し良い宿に泊まって語らおうじゃないか!」

暑苦しく肩を組んで来たジーニー。そんな気持ちを無駄に出来るほどマーワルドは悪い人間じゃない。
荷馬車から降りようとしていた体の位置を戻し、同じように肩を組んでやる。

「仕方ないね……とりあえず宿に着いたらちょっとだけ自由な時間をくれると助かるよ」

「あぁ。俺も商売があるし……なるべく早く戻るようにはするから酒でも買ってくれい」

「……安いのしか買えないだろうから期待しないでほしいね」

所持金が少ないのはもちろんだが、あまり酒を嗜まないためどれが良い酒で悪い酒なのかが分からないというのもあった。たまに気持ちを高揚させるために飲んだりはするのだが。

「俺はこいつを厩に預けて来るから、こっからは別行動だな」

「うん。そうさせてもらうよジーニー。じゃあ、また後で会おう」

マントを翻し、活気付いている町の喧騒の中へと姿を消していくマーワルド。
その遥か頭上、一緒に飛ぶのはアスラだ。肩に留まったりすると注目を浴びてしまうというのを理解しているため、こうしているのだ。

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あきゅろす。
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