[携帯モード] [URL送信]

〜龍と刀〜
夢の中W
ジーニーの荷馬車に積まれていたのは、鉱石の採掘に使うのであろう器具や保存の効く食料などと様々。

「たまたま違う町で買った採掘道具なんだけど、やっぱり売れなくてさ。そしたらジュネイでは逆に無くて困っているらしいって噂が飛び込んで来てさ」

再び列に並び直し、後ろの荷物を指差す。
彼は色々な町を回って商売を行って生計を立てている。他の行商人の目的は大抵が金を稼ぐ事だが、ジーニーは違う。ただ世界を見てみたいだけなのだ。
そのために数年間商人の下で働き、心得たる物を覚え込まされ、それを実行しつつ旅を楽しんでいた。

「我が親友は世直しかい?」

「世直し、なんてそんな大それたものじゃない。一人の人間がやれるのは、ほんのちょっと道を修正してやる事ぐらいだから」

「相変わらず難しい事を言ってくれるねー。ま、様になってるから良いんだろうけど……ここだけの話、王族には気をつけて動くんだぞ」

マーワルドの耳に口を寄せ、小声で囁く。聞かれるとマズい事なのだろう。

「前王が崩御したのは?」

「ちょっと前に風の頼りで」

「なら話が早い。あそこの王に就いたのが前王の一人息子で気性が荒い事で有名なキィスだ……」

「それも聞いてる」

前王はとても慈悲深く、民を全ての災厄から守ろうと様々な事に手を施した良き王だった。
しかし、急な病に倒れた彼は自身の息子であるキィスに王位を継承させ、そのまま帰らぬ人となってしまう。臣下は全員が涙を流し、国民の大多数が一週間は何も口にせずに王の死を悼んだ。
というのがアスラを通じて得たマーワルドの知識。

「キィスというのはどういう人間なんだ?」

「何から話そうか……そうだな。年齢はまだ二十。幼少時代にまともに受けた教育は軍の動かし方、剣の振り方や槍の扱い方……そのくらいだな」

「おいおいジーニー、それじゃあまるで元から軍隊に入るためだけに育てられたみたいじゃないか。勉学は?」

ジーニーは呆れたように首を振る。

「噂じゃ、この町が栄え始めたのも鉱山を掘り起こして武器を大量生産するらしいぜ?遊びで戦争をやりかねないって農村の人々は嘆いてた」

「そんな事が……」

「あくまでも噂だ。金属は高く売れるし、もしかしたら外国との貿易のためかもしれないしな。戦争にでもなったら俺はさっさとこんな国見捨てて、外国でゆっくり商売させてもらうけどな」

今の噂がもし本当などだとしたら、世の中は更に大変な事になってしまう。ただでさえ酷い世の中なのに。

「っとマーワルド、そろそろこのお話は止めよう。ありゃぁ帝国兵じゃないか……まさか噂は本物なのかよ?」

「という事は王直属の部隊?」

「ああ。引き返す訳にもいかないしな……適当にやり過ごすから俺に合わせてくれよ?信じてるぜ、我が親友」

市壁は目の前。
そこに立つのは鎧を身にまとった四人の兵士だった。

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!