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〜龍と刀〜
密やかなる襲来
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そこは闇が支配した世界。
太陽すらも黒。
そんな中、中心に近い場所にうっすらと明かりが灯されている。
見える二つの人影。

「炎燈は失敗したのね……戦闘狂いに行かせたのが間違いだったかしら」

その内の一つは女性らしい。自分の犯した失敗に溜め息をつく。

「その上、我々の存在まで。慎重に動かなければなりませぬ……誰を向かわせますか?」

もう一つは男性。少し低めのトーンで仲間と思われる女性に問う。
すると、周りの闇が動き出した。
周りの闇と言うよりは、闇の中の何かが蠢いている。

「あなたが決めて。……体調が優れないわ。これが終わったら、眠りに付くわ」

「成ったばかりで体が慣れていないのでしょう。私もそうでしたから……今回の目的はあくまでも龍神 陽の捕縛が優先です。適すると思う者は、進み出よ」

男性と思われる声の主は、闇の中の何かに勇ある者は居ないか、と投げかける。

「僕が行きましょう、騎士長様。僕なら、どちらの状況でも対処が可能ですし、情報も多く送る事が出来ます」

中の一つが、立候補する。その透き通った声は、闇の中でもよく響いた。
周りの闇がざわざわと声やら音やら似つかないモノを発する。

「……他には居ないようですね。では、付いてきて下さい。あちらへ渡る門を開きます」

「最後にもう一度言うわよ?龍神 陽の捕縛を最優先にして。抹殺は二の次」

闇の中の一人は軽く笑い、こう言った。

「分かっていますよ。行って参ります……」

それから、騎士長と呼ばれた男と共に歩いて行くと、先に黒い門が見えてきた。

「貴殿は、何故進み出たのです?」

門を前にして、騎士長は闇に話し掛ける。

「決まってるじゃないですかァ?殺す為、壊す為!久しく人間の悲鳴を聞いていないんでね、体が疼くんだよ!」

先程とは豹変した口調。

「そうですか……私は、主の盟に従うまで。他の事にまで口を出すつもりはありませんが、主の邪魔をするようならば、即刻斬り捨てます……開門」

門が鉄の擦れる音を鳴らしながら、ゆっくりと開いて行く。
眩い光が門の向こうから入り込む。
蓮乃市上空、陽達が暮らす街。

「アハハハハッ!!人だ、人!待ってなよォ、すぐには殺さないからさ!」

光に照らされた闇の姿は青年。全身を青いローブで隠している。
歩く人々に、まるで玩具を与えられた子供のような目を向け、はしゃぐ。

「……“凍血の殺戮者(トウケツノサツリクシャ)”雹よ。行きなさい。我等が主のために」

騎士長の姿は、黒い全身鎧に黒いマント、黒い長髪、黒いサーベルを腰に差している。
全身漆黒の騎士。

「ここは、形式に乗っ取るべきか……“凍血の殺戮者”、これより殺戮を開始します。騎士長様。……これでいいか!殺るぜ殺るぜ殺るぜぇ!ヒャーハッハッハァ!!」

狂喜の笑い声を盛大に上げる雹。
騎士長はマントを翻し、闇の中へ帰っていく。

新たな敵が陽を狙う。


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