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〜龍と刀〜
残党排除
*****


陽が戻り、魔物の残党を排除する事になってから約数時間。結界の内外に関わらずとっくに日は落ち、夜に支配されていた。

「さっさと……消え失せろぉ!」

十六夜の、いつにも増して苛立ちの含まれた怒声と共に、地面から巨大な火柱が轟々と出現。残り僅か−−僅かと言ってもまだ百体程は居る−−となった魔物たちを焼き尽くす。その火柱は焼き尽くすだけに飽きたらず、ついでに周りにあったビルまで溶かし始めた。

「師匠、それはやりすぎじゃないですか?!」

「あん?この程度、貴様らが直すから関係ない。俺様はただ邪魔な奴らを消してやっただけだぞ?」

弟子の一人が投げかけた質問を見事なまでに切り捨てる。

「そういう問題ではないかと……」

「弟子の分際でうるさいぞ貴様。何だったら貴様があの魔物共を一人で排除するか?出来たら一人前と認めて俺様が直々に金鳳の技を伝授してやろう」

「……無理ですスミマセン」

「分かれば良いのだ、分かればな。さてこっちは終わったか。あとは−−」

木刀を横に振り、火柱を消す。残ったのは真っ黒になって焦げたアスファルトと、一部を溶かされたビルだ。
懐から新しくタバコを取り出し、火を点ける。

「−−あっちが片付けば終わりだな。街の修復は協会にやらせとけば良いか」

紫煙を口の端から漏らし、空を仰ぐ。どうもこの時期の空は澄んでいて気持ちが良い。


*****


「龍神〜三匹くらいそっちに逃げたよ〜」

「先輩なら追い付けるでしょうに……」

幸輔の間延びした声、そのすぐ後には魔物の足音が複数。
ボロボロの体だが、この程度の相手ならまだ動けるはずだ。
白銀を下段に構え、向かってきた人型の魔物を何体か同時に凪ぐ。斬り裂かれる肉体だが、やはり鮮血が舞う事は無くただ闇が漏れて霧散するだけだ。無駄に汚れるのも嫌なのだが。

「さっすがだね〜」

「いや、そんな事は……でもかなり片付いたなぁ……とりあえず、一休み一休−−」

「龍神君!ちょっとごめんなさいね!」

危険が無いか辺りを確認し、座り込もうとした時だ。紗姫の謝罪と共に、陽の体が持ち上げられ−−

「……!?」

−−空中に投げられた。

「悪いな、少年。『半月』よ、飛べ!」

下で起こっているのは、月詠が光の剣を飛ばし、魔物を薙ぎ払うという何とも大胆な一掃攻撃。陽の居た場所もその攻撃範囲だったらしく、光が舞っている。
幸輔はちゃっかりと高所に移動し、高みの見物。と、余裕に分析していた陽だったがいよいよその余裕も無くなってきた。理由は簡単、落下が始まったからだ。

「うぉ……っ」

この高さは正直マズい。さすがの陽でも頭から落ちてしまえば命は無い。ここは投げた本人を頼るしか方法は残されていない。

「まったく仕方ないわね……」

金髪を揺らし、腕を伸ばす。何本かの影が絡まり花のように開く。
クッションを作ってくれたらしく、陽は安心して身を預けた。

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