〜龍と刀〜 騎士の心T ぶつけられた白銀の刃に淡い光が灯されると、その刀身から魔法陣が出現し、アスラの障壁に溶け込んでいく。 「これは……」 自身の鎧に掛かっていた強固な障壁が力を失って崩れ去る。これによってアスラに対する攻撃にも威力が発生するはずだ。 「どんどん守りが無くなってるな。お前、本当に本気でやってるのか?あんたの盟約ってのは……そんなもんだったのかよ」 ある程度ではあるが、自分のペースに持ってこれた陽は、挑発も兼ねて言葉を放つ。 これを調子に乗っていると判断するのか、それとも挑発だと見抜いて今まで通りの動きを見せるのか。 「その程度の挑発が私に効く訳がありませんが……その誘いには乗りましょうか」 「っ……!?」 言葉が消え去った瞬間だ。 いつの間にか頭上にはアスラが居て、サーベルを振りかざしていた。 突然の出来事に反応したのは持ち前の瞬発力、そして偶然。 繰り出される素早い一撃を白銀で受け止める。重みのある攻撃により、足が地中へとめり込んでしまう。急いでそこから抜け出そうと足を伸ばせば、そこには再びアスラ。 「挑発に乗った訳ではありません。盟約を、我が盟主を汚した罪は絶対に許さない」 青い切れ長の目に浮かぶのはあからさまな怒りの色。 盟約・盟主への冒涜をされた事が引き金となってしまったようだ。先程までとは速さが全く違う。 「容赦は……しない!」 ふらついた陽へと放ったのはサーベルに魔力を付加した漆黒の斬撃。それを逆袈裟から仕掛ける。 「間に合えぇ!」 中段に構えた白銀の切っ先に、同じように魔力を集める。属性は得意な水気だ。 瞬時に集められた即席の水圧の刃と、純粋な闇の塊が激突。当然だが、陽が押されている。 「武器は剣だけではありませんよ?注意は細心に払うべきです。戦闘だけに限らず、至る事に」 言うアスラはサーベルに闇を蓄えたまま、背中にある大きな翼をはためかせた。 一回目で陽の目を眩まし、二回目で体ごと吹き飛ばす。 「足元がどんなに悪い状態でも、これに耐えられないようではまだまだですね」 地面を転がった泥だらけの体を起こす。 直接的なダメージでは無いのだから、こんな事でやられてる場合ではない。 白銀を思い切り突き刺して杖代わりに。 「そんなに、盟約とやらに傷付けられるのが嫌か?」 「当たり前です。あなたには分からないでしょうが、これは私の命よりも大切な……私が彼の騎士として生きているという証。言わば騎士の心」 サーベルの先端を陽に突き付け、鋭い眼光で射抜く。 だが、陽も負けてはいない。 「それに縛られて生きて来たのか?盟約を実現させるために他の道を取る事は出来なかったのか?」 「これが近道です」 「遠回りしてでも穏便にしてやろうとは思わなかったのかよ……」 白銀を抜き去り、アスラを睨む。 「それって、あんたの生きる意味が無いんじゃねえか?」 「私には盟約がある。それを達成するためなら何でもします」 [*前へ][次へ#] |