〜龍と刀〜
記憶(オモイデ)の場所でZ
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兜が外れた後のアスラの動きには今までとは違う、焦りのような物が感じられた。
自身の長い髪のせいもあり、動作が読まれてしまう。表情は変わっていないとは思うが、目線でやろうとしている事が割れるのだ。
これが嫌で兜で顔を隠していたのだが、壊されてしまった以上、どうしようもない。真正面からぶつかり合うしかなくなったのだ。
「右……!」
しかし、このアスラの状態は、陽にとってはかなり戦い易くなっている。小細工が苦手な陽にも相手の動きが読めるのだから。
今まで苦戦していたのが嘘のようだった。
「でも、障壁の硬さは変わらないか……」
「当然だろう。我の硬化のようにあの鎧自体に術式が込められているのだ。生半可な攻撃では外れんぞ」
「それぐらい分かってるさ」
アスラのサーベルを避け、白銀による斬撃を放つが、障壁によって阻まれる。
変わったのは動きだけで、他の元からあるスペックには影響は無いようだ。
「なあ白銀?その術式ってのは壊せるのか?魔術的な何かで」
距離を開け、白銀に問う。何やら対抗策を思い付いたみたいだ。
「うむ。解除用の術式にて破壊が可能だな」
「手はあるんだな。その術式は白銀だけで組めるのか?」
吹き荒ぶ風の先に居るアスラから視線を外さないよう、目を凝らす。
靡く髪とマント、そして翼。綺麗な漆黒の流れが出来ていた。
「少々時間は掛かるが、出来ない事もない。ただし障壁の術式を覚えなければならぬのだ……それまで何度か障壁にぶつけてくれ」
「どのくらい掛かりそうだ?」
「……良くて十五分が妥当か。こちらに来てからはあまり時間という物を感じないが。西洋の術式の解読はあまり得意ではない」
白銀の言う通り、この空間に来てからは時間感覚がズレてしまったのか、今が何時なのか分からない。
それもそのはず、先程から太陽の位置が変化していないのだ。雲は流れているのだが、太陽は縫い止められてしまったかのように動かない。
そう言えば、最初にアスラが言っていた。ここは、アスラの記憶によって創られた空間だと。
つまりこの昼間のような時間帯がアスラにとっての思い出なのだろう。
「白銀にも苦手なのがあるんだな」
「……当たり前だろうが。我だって全知全能ではないのだぞ?まだまだ知らない事の方が大半だ」
「はぁ、そんなもんかね」
「……作戦会議は終了しましたか?」
そんな二人のやり取りが終わるのを待っていたのか、アスラが声を出す。
「ああ。たった今な」
「そうですか……なら、行きます」
再び動き出した二人の時間。
陽はアスラの強固な障壁を破るためにわざと正面衝突を選んだ。
急降下によるスピードと、アスラの力が相乗して放たれる攻撃。風の抵抗を感じさせない鋭い剣閃は確実に陽を射止めていた。
「……罠?」
「違うね!ただの斬撃だよ!」
迫り来るサーベルを寸でのところで龍化した腕で防御。血が滲み出るが気にしている場合ではない。
そして、思惑通りに白銀をアスラの障壁にぶつける。
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