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〜龍と刀〜
感動?
白銀を、血振りの動作で払う。
床に嵌った熊の巨体は、今までの魔物と同じように煙に似たような物に変わって霧散していく。
残ったのはボロボロになった道場と、完全無傷の結界だ。琉奈の言った通り、強度はかなりのものだったらしい。
信じていなかった訳ではないのだが、ここまで凄いとは思わなかった。

「待てよ……あの人が魔術も剣術も出来て、ルナさんもかなりの使い手。つまり、その血を引いてる月華は超エリートか!?」

想像されるのは、月華に魔術を習っている自分の姿。期間が短い月華に、教えられている陽は、どこか可哀想だった。

「可能性としては否定しきれぬから怖い物だ……よもや遅れは取らないだろうな?」

「っ……あ、ああ余裕だ。余裕に決まってる!俺が負ける訳ないだろ?!」

柄にもなく声を裏返してしまう。ここまで動揺している陽も珍しくある。

「……しっかりな」

「分かってるさ。魔術が使えなくても剣術を極めてやる。それで、守る」

「ならば……良いがな。そうだ陽、我は喋っていても大丈夫なのか?月華は驚くだろうに」

これと言った根拠は無いのだが、多分何とかなるだろう、そんな気がした。
そんな会話を続けていると、解けた結界から月華が走って来る。床の穴を危なっかしく避けながら。

「陽ちゃん!」

「ん?怪我なら無いぞ。あの程度の相手ならな。今は道場をこんなにしちまったのをどうやって言い訳しようかと思案中だ。……それで、どうだ?」

今の戦闘を見て、月華はどういう動きを見せるのか。今ならまだ、片足を突っ込んだぐらいだ。引き返すのも容易いだろう。

「うん……やっぱり凄いなって」

しょんぼりと語る月華。この反応はもしやと陽が思った瞬間だ。

「こう、ズバッーって!私、こっちの道を選んで正解だったよ!」

どうやら逆効果だったみたいだ。
目を輝かせて言う月華に悪意は無いのだろうが、十六夜に何を言われるか分かった物じゃない。

「観念しなさいよ。月華ちゃんが決めたんだから、龍神君が介入出来る余地なんてないのよ」

「それは確かにそうだがな……?ここまでやる気に満ちてると、嫌な事が起こりそうで……魔術の暴発とか」

「陽じゃあるまい。ある訳が無い」

「そうだぞ少年。ワタシの依り代に不可能限ってそんな事が起こるなどと不吉な事を言うな」

周りに居る皆に責められる陽。

「って、いつの間に月華と入れ替わってるんだよ」

「少年の気にする事ではない。ワタシの自由だ。という訳でワタシは戻る」

言いたい事だけ言って去る月詠。さすがは神様だ、気まぐれである。

「これから更に大変になりそうだ……」

「良いじゃない、暇を持て余してゴロゴロしてるよりは」

「そうよ?若いんだからシャキッとしなさい!」

陽には休まる所が無いのだろうか、と思えるくらいに容赦なく予定が埋まっていくのだった。

「お母さーん!魔術、教えて!」

「はいはい、そんなに急がなくてもちゃんと教えるから」

楽しみを覚えた子供みたいにはしゃぐ月華。
そして、十六夜が帰って来て道場がボロボロになっているのに唖然、激怒したのはそれから数分後の出来事だ。

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あきゅろす。
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