〜龍と刀〜
疲れの原因
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色々な意味で大騒動だった文化祭が終わって数週間が経った。
街並みはすっかり秋の色に染まり始め、吹く風も肌に刺さるように冷たい。
そんな秋の昼間、陽は一枚の紙面と奮闘をしていた。今まで勉強して来た事を試験する、学生の本分、テストである。
この最後の教科を乗り切れば全てが終わり、晴れて自由の身になるのだが……。
「……」
陽の手は、完全に止まっていた。ペンを持ったまま、頭を抱えて集中しているのだ。教科は数学らしい。見た事の無い数式−−陽と井上ぐらいだが−−乱立されたテスト用紙。
「……」
その手からポトリ、とペンは落ちる。なんと、陽は問題という強敵と対峙していたのではなく、最初から眠っていたみたいだ。
頬杖を付いて眠る陽、この原因は最近の異常過ぎる程の忙しさからだった。
*****
「あぁ、くそっ!またかよ!」
深夜、枕元の携帯電話がやかましく鳴り響く。今日ので一体何度目だろうか。文化祭が終わった翌日辺りからだ。
「最近は多いな……何かの予兆か?」
「知らねえよ。とにかく、さっさと片付けに行くぞ!」
苛立ちを見せながら白銀の柄に手を置き、玄関へと向かう陽。急いでいるとはいえ、さすがに靴を履かずに出て行ける訳がない。
「なにー?また出るの?」
眠たそうに目を擦って部屋から出て来た半狐状態の紗姫。とりあえず、紗姫と月華の二人にも事情は説明してある。
月華は、十六夜が同じ状況だという事を知っていたためすぐに納得。紗姫も納得はしてくれたのだが……、
「夜は苦手なの。それに、そのくらいの相手なら龍神君一人で十分でしょ?」
と、手伝う気はまったく無いらしく、陽が出掛ける音を聞きつけて見送りする程度。
「お前さ、とりあえずズボンは穿けよ……もう寒いだろ?」
紗姫の寝間着は、どこで買ったかは知らない大きなワイシャツを適当にボタンを締めるだけという、いかにも目のやり場に困る物だ。
「良いの。……それとも、龍神君はこういうのは嫌い、かしら?」
「好きとか嫌いとかじゃなくてだな?ああ……良いや。行ってくる!」
「ん、行ってらっしゃ〜い」
大きく欠伸をする紗姫への返答も疎かに、敵が出現されたと情報が入った場所へと足を向ける。
「今日はどこなのだ?」
「確か、街中の方だ。まったく……見境なく動き出しやがって」
「結界が壊されては街への被害が大きくなってしまうな。急げ」
白銀に言われずとも、全力で走る陽の目にはもうドーム型の結界が見えている。
あとは白銀が一部を緩和し、陽を通過出来るようにするだけだ。
「白銀、頼む!」
「ああ、分かっている」
白銀の切っ先を走った状態のまま突き出し、そのまま突き抜ける。
結界の中では既に何人かの魔術師が化け物との戦闘を繰り広げていた。
飛び交う炎や雷。ぶつかり合う刃と牙、それぞれが織り成す様々な光で満ちた空間。
「こりゃあ、直すのにも骨が折れそうだな……」
「陽、お前はほとんど何もしないであろう?壊すからな」
「余計なお世話、だっ」
吹き飛ばされたであろう化け物を一閃のみで片付ける。
これで、陽の気持ちも戦闘へと切り替わった。
「さて……始めるか……」
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