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〜龍と刀〜
過去] 再戦
睨み合いを続ける二人。その姿を陽は目に焼き付ける。
まずは立ち方。右足を前にする事で次に踏み出した時、瞬時に懐へ潜り込めるという事と、逆に月詠が向かって来た場合には軸になっている右足を下げる事で回避にもなる。
白銀を構える手は、完全に柄を包み込まず、軽く放す。これは基本中の基本だが、陽などは意識していないと握り込んでしまう。無意識下でやれる事が目標だ。

「……達彦の戦い方は今ではもう、完全に二刀を汲んだスタイルだ。動きは別だがな」

結界内で月華の治療をしていた十六夜が、陽を見向きもせずにそう言う。振り返って何かを言いかけた途端、空気が振動した。
均衡が崩れたのだ。
どちらともなく攻撃を。
月詠は光球を無作為に造り上げ、連射を繰り出す。単純な破壊を目的とした光球はバラバラな軌道で、バラバラなタイミングで達彦に向けて突進。

「ふっ!」

鋭く息を吐き、迫る光球を切り捨て、あるいは魔術で相殺、あるいは避ける。流れるような動作で光の弾幕をかいくぐって行く。しかも一直線に、ズレる事無く。
右手と左手、場合によって白銀を持ち替える。華麗とも言える動き……これこそ二刀使いの真骨頂。

「くっ……『満月』!」

難なく正面に辿り着き、白銀を振り上げる達彦へと堅固な障壁−−『満月』が浮かぶ。名の通り円を描く障壁。それを隔てた向こう、達彦が腰溜めに白銀を置いた。

「そうそう同じ手は通用しないっ!『剣凰流』剣技・壱式−−」

達彦の得意な属性の木気は、白銀の刀身を包むように、風を生む。
大きく上体を捻り、放つのは居合いだ。

「−−抜刀、閃!」

気合いと共に振り抜かれた風の刃が『満月』の表面を走りながら傷を付け、本体、つまりは白銀が紙を破るかのように容易く障壁を破壊していく。
月詠の長い髪に隠れた顔に驚きが浮かんだのも一瞬、すぐさま体勢を立て直すために新たな魔術を造り出す。

「ならば……『弦月(ゲンゲツ)』!」

月詠の指から射出されたのは無数の輝く糸。達彦の風によってか、ふわふわと漂っている。

「触れると、切れるぞ?」

言いながら腕を真横に。漂っていた糸が木々の数本に絡み付き、それらを無造作に断ち切った。

「っ……陽!上だ!」

大音声で陽に警告を。周囲を警戒していた陽の頭上、切られた木が他を巻き込みながら陽へと迫っていたのだ。しかし、陽は気付いていない。

「……ぁ」

脇差しを構えるが、その程度の武器で防げる重さではない。
立ち尽くす陽へと容赦なく覆い被さろうとする木。

「まったく……俺様の手を煩わせるな。貴様も中に入っておけ!達彦!貴様もしっかりしやがれ!」

結界から伸びた腕によって陽は結界内へと引きずり込まれる。治療を一旦中断した十六夜だ。

「……少し広げるか」

陽が入った事で狭くなった結界に魔力を流し、容量を大きくする。それが終わるとすぐに治療へと戻っていく。

「さすがに少し焦ったよ……さて、仕切り直しと行こうか?」

「十六夜には迷惑を掛けぬようにな」

白銀が小声で呟いた。

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