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〜龍と刀〜
陽の学校生活V
「っ……頭、割れるって……」

説明を聞かされていたせいで、ひどい頭痛がする。多分、知恵熱も出ているはずだ。
陽という犠牲のおかげで理科の授業を潰すことが出来た。

「陽ちゃん大丈夫?何かホントにつらそうだけど……」

「いや、コレはヤバいぞ……痛っ!」

頭を抱えて悶え苦しむ。無理に平静を保とうとすると余計痛くなる。
心配そうに陽の顔を覗き込む月華。
その時陽の肩がポンポンと叩かれた。

「コレ、どうぞ……」

春空だった。手には何やら箱を持っている。

『頭痛に良く効くヴァッファリィン。錠剤』と書かれていた。

「お、助かる。ありがとな春空」

「いえ、私、頭痛持ちなので常に持ち歩いてるんです」

少し自嘲気味に笑ってから望は教室を後にした。
変な視線を感じて振り向くと月華がジトっとした目で陽を睨んでいた。

「なんだよ月華?」

「別に何でもないよ。ちゃんとお礼言うんだなって……私には言わないし……気になって、ね」

とても気まずい雰囲気になってしまったようだ。
ここはとりあえず礼を言うべきだと思うのだが、陽はこう言った。

「ま、気にするな。人によって態度くらい変わるさ」

「それどういう意味?私の場合はどんな態度になってるの!」

鋭い反論。
陽は事の発端となってしまった原因を探る事にした。
頭痛薬をもらって、礼をして、月華がそれに反応して。

「(あ、俺が悪いなこりゃ。全く、人と接するってのはどうしてこうもうまくいかないかな……力押しじゃどうにもならんし)」

瞬時に自分のとるべき行動を判断し、実行する。

「悪い。俺が変な事を言ったみたいだな」

「わ、分かってくれれば、私も嬉しいかな?(ちょっと言い過ぎちゃった……怒ってる?)」

「ホラ、バカやってるから時間無いぞ。次、体育だろ」

そう言って弁当にがっつく陽。心なしか照れ隠しに見えなくもない。

「うん!今日は何やるのかな?」

「筋肉野郎の気持ちなんか知りたくもない。第一適当すぎだ。あれはダメだろう」

ものの数分で弁当をたいらげると陽はおもむろに立ち上がった。

「俺は先に行くぞ。遅れるなよ?」

「だ、大丈夫!ご飯残して行くから」

陽は他の男子連中を引き連れて、教室から体育館にある更衣室へと向かい歩き出した。

「なぁ、今日何やんだろな?」

「知らん。遅刻した奴はいないんだろ。だったら球技かなんかに決まってる」

更衣室での会話。陽は大抵の答えが適当だ。

「はぁ……時間あるし?女子の方に覗きでも行きませんかな龍神君?」

「寄るなっ、汚らわしい!」

「まあまあ、そう言わないで!みんなで行けば恐くない!レッツごふぁ!?」

体育前に無駄な体力を使う気はさらさら無いので、近寄ってきたバカとメガネの双方を殴って置いた。

補足すると、バカの方は井上 和真(イノウエカズマ)。メガネの方が中島 康夫(ナカジマヤスオ)。クラスの中では結構陽と仲が良い。

「仕方ない、龍神が行かないなら……俺達だけで禁断の地へ……!」

「もちろん!幾千幾万の屍を乗り越えて!いざ行かん!」

「あー盛り上がってるとこ悪いんだが、屍になるのはお前たちのようだ……」

会話が漏れていたらしく、女子に囲まれる二人。

リンチ。

こうして、体育館男子更衣室前に屍が二つ出来上がったとさ。
めでたしめでたし。

「「めでたくなーい!」」

「なんだ……生きてたか……」

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