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〜龍と刀〜
夕暮れの決闘U
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刻は夕時。
壊は何気ない広場のベンチに腰掛け、周りを眺めていた。
ランニングをする叔父さんや犬の散歩にをしている老人、駆け回る子供たち、歓談に興じるカップルなど。ここは色々な年代の人が利用しているみたいだ。

「……」

その平凡な日常風景を否定するかのように、心の中で封牙が叫ぶ。全て狩れ、狩ってしまえと。

「龍神のことだ。そんなことしたら容赦なんてしねえだろうなぁ……お前も、戦いたいんだったら言うこと聞けよ……!」

ガンガンと響く封牙の声を必死に堪え、陽を待つ。
すると、願いに反応したのか、人々は急に動作を止め、広場から去って行く。

「来た」

虚空から漆黒の衣と、鎌を。それを皮切りに黒い髪は白になり、瞳は深紅に。

「待たせたな……飛澤」

「時間きっかりとは、龍神にしちゃあ珍しい」

遠目にある時計はちょうど五時を指していた。時間にルーズな陽から見れば、早起きと同レベルで珍しい事だ。

「久し振りだなあ兄弟!別の姿もなかなか心地良いぞ?」

「次こそ、貴様には消えてもらう。姿が何であろうが関係は無い」

「クククッ……派手に行こうじゃないかぁ!」

戦いに喜びを感じている封牙と対称的に、静かなる怒りを燃やす白銀。前回のような愚は犯さないと決めている白銀は、至って冷静だ。

「龍神、始める前に一つ良いか?」

「何だ?」

「魔術の使用は無しっていう提案だぜ。不利になるのは俺だかんな……」

「……良いのか?実戦経験が長い俺に、魔術使用禁止」

結界があるからといって、下手に強力な魔術を連発出来る訳じゃない。
しかし、陽も魔術は苦手だ。これで大体平等なはず。

「じゃあ……」

「始めようぜ、龍神!」

どちらからともなく、自分の得物を振るう。烈しく火花を散らす白銀と封牙。鍔迫り合いの最中、壊の足が腹部目掛けて放たれた。

「っ……」

それをまともに受け、陽の集中が一時的に逸れる。隙を見出した壊は、封牙の柄で突きを連続で繰り出す。尖った先端は、当たれば即死は免れない。

「だけど、そんな鎖付いてたら動きが読めるぞ!」

鎖の流れた方向を読み、鎌の刃とは反対側へと白銀を使って移動する。これなら確実に攻撃圏外だ。

「陽!後ろだ!」

チャリ……、と金属が動いた音が聞こえたと同時。背中に火傷を錯覚させるほどの激痛が襲う。勢いを付けて迫っていた陽はその攻撃によって、壊の後方へ吹き飛ばされる。

「悪いなぁ白銀……どうやら尻尾みたいに動かせるみたいだ」

「そういうこった。俺に圏外はねえ!」

背中の痛みは続いているが、休む訳にはいかない。ぬるりとした感触が皮膚を撫で、シャツを真っ赤に染める。

「立てるな?」

「当然、だ。魔力を使わないで済む分、消費すんのは体力がほとんどさ」

土煙を巻いて立ち上がり、体勢を立て直す。下手に近付くのは危険、だが、魔術を使えない以上接近戦になる。
しかも、封牙は自由に鎖を操れると来た。手数の多さでは壊が勝る。

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