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〜龍と刀〜
夕暮れの決闘T
*****


「さて……準備するかな」

今日は約束の土曜日。
珍しく自力で起きて、開戦までの暇な時間を過ごしている。

「どんな服を着てくか。無難にジャージか、それとも私服か?悩む……」

まるでこれから遊びに行くような感じなのだが全く違う。

「動きやすさを取るべきなのか?」

「何故そこまで悩んでおる……」

見るに見かねた白銀が口を開く。
決闘にどんな服装で行くのか考える人間が居るとは思わなかったから、というのもある。

「胴着などはダメなのか?決闘と言ったら正装ではないか」

「悪いが、俺は街中を胴着で歩けるほど気が強くないんだ。どっかの頭首と違ってな」

ジーンズのズボンとジャージを見比べながら言う。
結局手に取ったのは−−

「決めた!ジャージにしよう!」

黒地に赤いラインが走る、有名なスポーツ会社のジャージだ。あまり着ていないのか、新品同様。どうせ今日一日でボロ着になるのだが。

「次は結界の札が届くのを待って……」

「自分で張れば良いものを」

「うるさいな。あれ高いから返品する訳にもいかねえんだよ?一枚五万だぜ?」

先日協会に連絡を入れ、業者に仲介をしてもらった。支払いはもちろん陽の口座からの引き落とし。
一枚五万円で今ならなんと十枚セットで八万五千円が売り文句だったので、念の為二つ購入。大変な出費だ。

「あ、文化祭の服もだったか……そろそろ報酬入れてもらわないと。金欠だ」

やっとジャージに着替え、少し足を上げてみる。不備が無いかの確認し、階段を下りた。

「相変わらず早いな、月華」

「おはよ……あれ?陽ちゃん!?」

「そこまで驚くかよ」

「驚くよ!も、もしかしてどこか悪いの?だったらちゃんと寝てなきゃ!」

陽が少しだけ早く起きただけでこの慌てようだ。いつもどんな休日を過ごしているのか想像がつきやすい。

「俺ってそんなに寝てるイメージ?」

「早起きは体に毒ーって言った人が起きてるんだもん。心配しない方がおかしいよ」

「……そういや言った記憶も」

寝ているのが長いと言うより、起きれないだけだ、というのは本人の言葉である。

「そんな事より、飯にしようぜ?腹が減って大変なんだよ」

「はーい!じゃあちょっと待っててね」

いきなり起きて来た陽の分はもとより作っていなかったらしく、再びエプロンにを着用し、台所へと消えて行った。

「あふぅ……やっぱ朝は苦手だ」

テレビの前に陣取り、ぼーっとする。台所からは食欲をそそる良い香りが漂って来た。

「陽ちゃ〜ん!手伝ってくれるー?」

「ああ。今行く……よいしょっと」

年寄り臭い掛け声で立ち上がり、月華の手伝いへ。

「今日は日本食だな」

皿を並べながら、見たまんま、当たり前の事を口にする。白飯に味噌汁、焼き魚に漬け物。純和風である。

「いただきます」

「うん。どうぞー」

礼儀はしっかりしていたい、という陽だった。
そしてこのような他愛無い会話を続けながらも、陽は着々と決闘に向けて考えを巡らせる。寝起きの頭だが……。

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