終了
夏喜は振りかぶって開いた掌を強く握りしめる。
(なんにしろ、お前は……これが正しいと思ってやったんだろ……)
夏喜は強く数字の群衆へと強い眼光を当て、そして少し笑って、
「奇遇だな、俺も、正しい事には絶対に嘘はつけないんだよ」
そして、夏喜は左手を強く突き出した。
そこにある空中に浮いたアルファベットと数字、さらにその先の無意識の芦澤。
夏喜の左手がそれらをあっさり撃ち抜き、吸収した。
本当、今までなんでこんなに苦しめられていたのか笑いたくなる程に。
あっさりと、まるで渇いた喉が水を飲み込むように。
「――エ、らー発生……能力、第、三――…及び、全ての、損傷……強制……終了」
プツンとテレビのスイッチが切れるように芦澤の口から全ての声が消えた。
アルファベットも、数字も芦澤の目も何事もなかったように消えた。そして、
雷撃が空から夏喜を撃ち抜いた。
最後に詠んだコードで芦澤が発生させた雷雲落ちた雷は夏喜の体を一瞬で突き抜けた。
夏喜はその瞬間、声を聞いたような気がした。
だが、だれのものかはわからない。もしかすると、高宮か、朧か、あるいは目を覚ました、芦澤だったのか、それすらもわからなくなっていった。
ザンッとナイフでも刺されたかのように、足から力が抜け、次第に指先一本に至るまで、たった一撃で全ての力を失った。
夏喜の目に見えるのは暗闇のみ。
それでも、夏喜は笑っていた。まるで達成感に溢れた子供のような笑顔で。
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