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助っ人
近づけないどころか、雷撃によって芦澤との距離が広がってしまっている。
一つの攻撃を防ぐと、間を開けずに次の攻撃が来る。そうなると防ぐ事も無意味である。

「くっそ……」

襲いかかる一線の雷撃を防ぐために左手を差し出した。
その、左手を差し出したまま戻すこともままならない夏喜に、もう一方から雷撃の槍が伸びる。
完全に無防備となった夏喜の脳天に、凄まじい速度で雷撃の槍が襲いかかり、

「伏せろ!」

雷撃の槍がぶつかる直前、夏喜は聞いた事のある叫び声を聞いた。しかし、高宮のものではない。
夏喜はその言葉に反応し、意識せずにその言葉どおり体を動かす。
その伏せた夏喜の図上を霞めるように何かが通り過ぎた。
そして、夏喜を襲っていたはずの雷撃の槍は襲って来ない。

「あちきのワイヤーは鉄製じゃ。鉄は電気を通すからの」

夏喜が声のした方向を見ると、朧が立っていた。ほんの一瞬で導体となるワイヤーを張り、雷撃の槍をワイヤーへと逃がしたのだ。

「な、何故……?」

「別に理由などない。ただ強いて言えば、今は禁書爆弾を止めねば、目的達成には到底たどり着きそうにないから、かの」

「今までどうしてた?」

「ふん、どうでもいいじゃろ。とにかく止めるんじゃろ」

朧は夏喜の質問を吐きすてる。
今朧がここにいるのは、そのつもりはなかったとしてもパトリスを救ってもらった事による借りを返そうという心も少なからずあるのだ。
しかし、夏喜はそんな事はもちろん知らない。だが、笑みを浮かべている。それは純粋に味方が増えた事による喜びだ。

「あぁ、手伝ってくれ」

二人は短く言葉をかわし、前を見ると二手に別れた。しかし、芦澤の優先順位は夏喜優先らしい。
夏喜には炎の柱や、雷撃、暴風など、次々と恐ろしい速度で連射されてゆく。

「無視を……するな!」

そこへ朧が芦澤の図上から5本ものクナイを同時にピンポイントで投げ込む。
芦澤はそのクナイを見上げるように見つめ、一瞬で起こした暴風で全てが威力を失う。

「く……ハンパない、ハンパない……けどチャンスじゃ!」

朧は再びクナイを10本程投げ込む。
その瞬間、夏喜が炎で地面を蹴り、加速した。

先ほどのクナイの投射から連続的な動作で朧がクナイを放ったため芦澤が夏喜の接近に気づく時間がなかった。
芦澤は何も考えていない無表情で機械的に朧のクナイを、今度は炎で跡形もなく溶かしてしまった。
しかし、そうなってしまった事はたいした問題はなかった。

「こっちだ芦澤!!」

そういった時には夏喜は芦澤の目の前にいる。
しかし、芦澤も黙っていなかった。次のコードを読み込もうとしている。
攻撃に徹しれば、再びコード能力を受けてしまうかもしれない。
しかし、

(お前がなんでこんな事になったかは俺は知らない)

夏喜にはそんな事は見えていない。見えているのは芦澤の周りを回る無数の数字のみ。
それが夏喜の目の前にある。
芦澤が使っていた正体不明の爆弾の正体が。

(でも、言える事はある)

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