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再開
このまま何も手を加えなくても、芦澤に向かっているアスファルトの弾丸は、ベクトル変換の能力によって反射されてしまうはずである。
故に高宮のした事は無意味に終わる。


だが、芦澤はそれをしなかった。
芦澤はアスファルトの弾丸を見ると、言葉が聞き取れないほど高速で小さく口を動かした。
その瞬間、おそらく何かの能力であろう光線のようなものを無数に乱射して、高宮の放った弾丸全てを粉砕し、砂へと変えてしまう。
しかしたった一つだけ、大きな欠片が残った。それは光線を逃れ、スピードもなくなったが、芦澤の頭にコツンッと痛々しい音を立てて着弾した。

「……ハッ、成功だぜ!テメェやれ!」

それを見て高宮はすぐさま夏喜を呼ぶ。
夏喜は高宮が自分が芦澤の近くに居るのにも関わらず弾丸を発射したため、路上に伏せていたが、立ち上がって様子を確認する。

「な、なんだっていうんだ……?今の芦澤には近づけても何もできないんだ」

「フンッ、テメェ、アホか?見ててわかんだろ!そして今のが決定的だ。海澄には複数の能力を同時には扱えねぇ」

「な、なぜだ……?」

高宮は苛立つように、髪をグシャグシャとかきわけた。

「口は一つしかねぇ。ってことはコードは一度に詠めんのは一つだけだ。わかるか?」

「あ、ああ」

「そして、違う能力を使った瞬間、芦澤にアスファルトが当たっただろ?」

その瞬間、夏喜は気付いたように首を強く芦澤の方向へと回す。まだ先ほどから、コードを変更している様子はなかった。
脅威的なベクトル変換と言う能力は夏喜の、今、目の前には存在していない。
夏喜は、首を元の位置に戻し、左手に目を向けて握り直す。芦澤に触れる事もできなかった今まで、単なる只のの無力な左手と化していたが、再び意味ができた。と夏喜は考えた。

「どうやったら海澄が止まんのかはわからねぇ!だが、殴れ!殴っちまえ!テメェは殴ってかまわねぇ。殴ってめを覚ましてやれ!今の俺にはできねぇからな。やれ!それがテメェが俺の代わりにやる事だ。」

「いいのか?」

夏喜はすこしキョトンとした表情高宮を見る。

「ハッ、あくまで俺の代わりに、だ」

そして、少し笑った。

「わかったよ」

そう言うと夏喜は左手を握ったまま、再び芦澤へと向かって走った。

「悪いな!いくぞ!」

夏喜はスピードが乗ったところで、かかとから炎を噴射した。その瞬間、夏喜の体の速度は秒速100mとなる。

「pqm超atmpA@TggGuN」

だが夏喜が芦澤に迫るまでの間に芦澤は、赤い目で、普通では聞き取れないような声で再びコードの変更を行う。
読み上げたコードは、学園都市、第三位の能力者の能力。

「ッ!?」

夏喜は反射的に左手を前に突き出す。
その瞬間聞こえたのは、パチッと火花のような物が鳴る重く鋭い音。
その音源は芦澤だった。彼女の額からは紫色の閃光がゴウッと凄まじい量の電気が溢れ出ている。
それは夏喜の心臓をえぐるべくして放たれた雷撃の槍。

「く……ああぁあぁ!」

しかし、夏喜は速度を緩めない。
左手を前に突き出したまま、雷撃の槍へと正面から突っ込んだ。
激突する夏喜の左手と雷撃の槍。すると、雷撃の槍は夏喜の左手に当たった途端、急速にしぼむように迫力を失い、最後には消失した。

「ッ……ごめん!!」

そして、邪魔をするものがなくなった夏喜の左拳は、迷いなく芦澤の横面を捉えた。

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