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弾丸
ドンッと夏喜の左手を襲う重い衝撃。先ほどと同じように左手ごと体が弾け飛びそうになる。
しかし、

「う、おおおおおおおお――」

それにも関わらず、夏喜は耐えている。先ほどまでなら間違いなく吹き飛んでいた。
なのに彼は動かない。
左手に強い力を込めていた。
しかし、それにも限界がある。夏喜の左手は既にそれが近かった。
ビキビキと骨が軋むような嫌な音がなり、再び夏喜の左手は弾かれてしまう。
しかし、

「ぬおおおぁ!!」

しかし、体はその場に止まり、後ろに弾かれたてをアームを回すように再び元の場所に戻す。
しかし、状況は変わらない。再び振りだしに戻っただけだ。
しかし、これをどうにかしなくては芦澤の危険が更に強まってしまう。

(くそっ!無効化して吸収できてるんだか、これじゃ吸収しても全く意味がない……)

夏喜は口を噛み締めて、ギリッと歯をならす。
その表情は屈辱の表情。このままでは何もできない。夏喜は自分の無力さを呪っていた。

(くっそ、なんとかしねぇと、なんとか!)

そうなってくると同時に現れてくるのは焦り。
はやくしないと芦澤が、という気持が先走りして空回りしてしまう。
その結果、無駄な力で夏喜の体はバランスを崩してしまう。

(しま……っ)

そのまま衝撃とバランスの崩壊が重なった夏喜の体は宙に浮き、まるでサッカーボールのように、いとも簡単に飛んでしまった。

グシャッと嫌な音がして、夏喜の体はアスファルトの路面に強く叩き付けられる。

「く……そがあああああああああああ」

夏喜の体には今の衝撃で体の至る所に傷を多い、彼の顔の半分近くは、血に塗られていた。

そして、体が動く度に体の至る所から果汁のように血が溢れている。

「おおおおおおおお!!」

夏喜は再び芦澤へと向かう。
しかし、何度繰り返しても同じ結果だろう。
夏喜だけでは何をしても状況を変えることはできないだろう。
しかし、
ここに居るのは夏喜だけではない。

「ハッ、足りねぇなぁ。やっぱし無理だったかね……ヤツ一人じゃ」

笑いながらそう言ったのは高宮隆治。
高宮は足に力を入れても、パトリスのダーツによる足の傷が響き、上手く立ち上がる事ができない。

「キッキッ、でもできる事はあるってね。このままじゃヤツの衝撃波に巻き込まれかねねぇっつの」

しかし、表情は余裕の表情だった。
高宮は小さく笑って、アスファルトの地面を見る。

「クソッたれめ、レベル2ってのは応用力に乏しいみてぇだな、意地はあるみてぇだが」

そのアスファルトを見つめながら、高宮の笑みが深まる。
そして右手をアスファルトにスッと当てた。

「ハッ、とは言っても俺のも確信はねぇがな……やってやるぁ!!」

そして高宮はアスファルトに触れた右手を強く捻った。
するとアスファルトの地面が捲れ上がり、アスファルトの欠片が高宮の体の回りを音速を超える速度で公転し始める。

「頼むぜえぇ!」

そして、高宮はその欠片の全ての回転の向きを変えて全く失速させる事なく芦澤へと向けた。
それはパトリスに行なった攻撃の数倍の威力を持っていた。並の人間がコレを受けたらただではすまない。しかし、高宮は容赦なく攻撃の刃を向けた。

「……すまねぇな」

芦澤へと向かって音速で進むアスファルトの弾丸。
芦澤はそれを赤く光る無表情な目でジロリと、自分に近づくアスファルトを見た。
しかし、それを見ても表情をピクリッと変えることもしない。

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あきゅろす。
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