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行間三
――行間三




学園都市の一角には、窓のないビルがある。
核兵器でも破壊できないほどの強度を誇る建物は、たった一人の『人間』のために用意されたものだ。
学園都市統括理事長にして魔術師、アレイスター=クロウリー。
巨大なガラス容器の中で逆さまに浮かぶ『人間』の口元には、僅かな笑みがある。
彼が見ているのは空中に直接写し出された四角い画面だ。
情報元は、常時学園都市を監視している人工衛星か何かだろう。
その画面では今地上で起こっている事が鮮明に、てにとるように見ることができていた。

「やはり、この問題はどうにかせねばならんな」

それを見てアレイスターは呟く。しかし彼には笑みしかない。
問題と言っているにもかかわらず、むしろ嬉しそうだった。
まるで楽しみにしていた物が目の前にあるとばかりに。

アレイスターの回りを取り囲む機会群は、あるデータと、現状を把握し、それを繋ぎ、明確かつ有効な情報へと統合処理していく。灰色の画面に鮮明な色がつき、それらはすぐさま有効なレポートとなって出力される。
レポートの内容はとある少女の頭に備わっているコードと呼ばれる力について

様々な化学式が踊り、吸入する酸素と排出される二酸化炭素の量から脳の作動状況を逆算し、学園年の能力者のデータから、少女が使っている力の質と量が導き出される。
そのさまは、全てが科学のみで構成された世界を象徴しているようだ。
そのモニタを見てアレイスターの表情がほんの一瞬、凍結した。

「やはり、180万もの生徒の能力をコード化して彼女に詰め込むには多少、無理があったか。『アレ』にはまだ早すぎる」

しかし、アレイスターはすぐに表情を元の笑みに戻し、

「この時のためにつけたレベル4だ。彼は正確な対処をしてくれるのだろうかね……」

アレイスターの笑みが少し深まった。

「それとも……」

さらにアレイスターの表情の笑いが深まった。今にも声を張り上げそうな程に。

「あの少年に止めてもらえるのなら、申し分なくなるのだが」

アレイスターはハッキリと笑っていた。
大人にも子供にも、男性にも女性にも、聖人にも罪人にも見える『人間』は目の前に浮かぶモニタを見据えて、笑っていた。

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あきゅろす。
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