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夏喜の正解
そうなれば、何を思い、どんな行動を起こし、脳が耐えられずにパンクしてしまうか、体が耐えられずにブレイクしてしまうか。
高レベルである彼だから、そんな能力者を高宮は何人も見てきた。
それだから、爆発と暴走を繋げる事ができた。
間違いなく、芦澤にはタイムリミットがある。
そのタイムリミットに達するまでに彼女を元に戻さなくては、芦澤の身が壊れてしまうのは目に見えている。

「良く持って……45分……持たなきゃ15分……アレイスターの事だ。すぐに壊れちまう事はさせねぇはずだ」

「高宮……」

ふと、声の方向に目をやると高宮の横には方膝をついてしゃがんでいる夏喜がいた。
どうやら、体力も立ち上がれる程にまで回復したようで、立ち上がって近づいてきたのだろう。
夏喜はパトリスを吹き飛ばし、未だに虚空の夜空を見ている芦澤を、驚きと心配の入り混じったような表情で見ている。

「芦澤は……止まったのか……?」

「いや、まだだ。単なる危険なら直ぐに止まるかもしれねぇが……パトリスは脳内に干渉しちまった。だから、なかなか止まれねぇはずだ……」

高宮は悔しそうな表情で歯ぎしりながらそう言った。彼女を止めたいが、止められるわけもない。いくら高宮が大能力者とはいえ、学園都市一位の一方通行にはかなうわけがない。
大能力者と超能力者の一位とはまるで格が違うのだ。
その一方通行の能力を操っている芦澤を止めるとは一方通行と戦うような物だ。
彼女を止める事などほとんど不可能。
しかし、

「あのままだと……芦澤が危険なのか……?」

高宮を見て、何を思ったのか、夏喜が尋ねた。正解ではないが、結果には相違ない。

「……あぁ」

だから、高宮は一言肯定した。
それに夏喜は、そうか。と小さく呟いて立ち上がった。まだダメージが残っているらしく、立ち上がった瞬間少しよろめいた。だが、すぐにバランスを取り戻す。

「てめぇ……何を……?」

それに次いで高宮もよろよろと立ち上がる。

「なら俺達が止めるしかないんじゃないの?」

「まさか!できると思ってんのか?今の海澄は、どんな力の『向き』をも変えちまう。あそこにいるのは今までの海澄じゃなく、学園都市一位の能力者だと考えてみろ!」

「じゃ、やらないのか?これはできるできないの問題なのか?」

高宮は黙る。確かにできる、できないの問題ではない。やらなければ芦澤が壊れてしまう。そんな事にさせるわけにはいかない。
しかし、下手をすると二人共に命を落とすかもしれない。そんな事にもならせたくない。特に夏喜はこの件に少し関わっただけのほとんど一般人である。
しかし、必然的にどちらかを選択しなくてはならない。

「確かに……やらなきゃならねぇ!でもな、ここで死んだらだからテメェは」

故に高宮は自分だけ残ろうという選択に出た。ここで死ぬなら自分だけでいい。巻き込まれただけのヤツを巻き添えにするんじゃねぇ。
と思ったから。
しかし、夏喜は高宮の言葉を遮る。

「確かに俺は死にたくない。でもな、なんか、ここで逃げたら死んでも死にきれない気がするんだよ。なんか間違ってる気がな。正しいのは止める事だと思うんだ」

夏喜は自分が正しいと思った事は大抵は貫き通す人間だ。それはここでも変わらなかった。
自分が正しいと思った事を見据えて両拳に強く力が入って震えていた。

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あきゅろす。
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