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詠み
近付いたということもよく判断出来ない程のスピードでパトリスに近付いた芦澤がパトリスの顔に軽く触れのだ。
それだけだった。しかし、たったそれだけの事でパトリスの体は宙に浮き、そのまま病院の屋上から飛び出してしまった。
パトリスの体はそのまま虚空の夜空へと消える。

「―――!!」

夏喜はこの光景を最初から最後まで目撃していた。
しかし、なんだか信じられない。
あの魔術師パトリス=ネビルをこの一瞬で葬ってしまったと言うことが。パトリスを倒した芦澤は人間であって人間でないように見えた。
芦澤はパトリスを吹き飛ばして、暫く虚空の夜空を見つめている。

「まさか……アレって」

高宮は夏喜とはまた違う驚きを感じていた。
高宮は見ていた。パトリスが竜狩りの鉄槌と言われる魔術を放った直後、墜ちた雷が再び夜空に帰ってゆきのを。
ほんの一瞬の出来事だったが彼には、はっきりと見えていた。
そして、一つの考察が出来上がる。

(まさかよぉ、ありゃあまるで一方通行(アクセラレータ)の能力じゃねぇか)

『一方通行(アクセラレータ)』とは学園都市の超能力者(レベル5)でも最強の一位である。
その能力は極めて強力で熱量、運動量、電気量などあらゆる種類の『向き』を皮膚に触れただけで自在に操ってしまう。
一方通行にはどんな攻撃も効かず、反射されてしまう。
芦澤が行ったのはまさにそれと同じように見えた。

(しかし……なんで使えんだ?海澄は無能力(レベル0)の読み取り(コードリーダー)じゃねぇかよ)

そう思った所で、何か違和感を感じた。
無能力?読み取り?
その言葉に少し違和感を感じた。

(まてよ……思い出せ……)

高宮は芦澤に何をした?つい昨日の事だ。
路地裏で芦澤を襲った。パトリスに襲わさせられてしまった。操心術と言われる強制的な魔術で。

(おそらくは……あん時だろ……)

高宮の頭の中で映像が次々と流れる。操られていたとはいえ、自分の記憶は自分の持ち物なのだ。

(………クククッ……なるほど)

そしてゴールにたどり着いた。
高宮が芦澤を襲った時の違和感、それは芦澤が一度だが、高宮に攻撃を仕掛けていた事だった。

それも、無能力で読み取りの能力の芦澤には出来るはずもない、風力操作系の切り裂く能力。

(まさか……アレイスターの野郎……学園都市の生徒の能力を……?)

芦澤の脳内には魔導書のコードだけではなく、超能力のコードも備わっているのではないか。それを詠めば魔導書と同じように『自分の能力』として扱えてしまうのではないか。

(しかし……意識内で使えない範囲内となると……)

芦澤は今まで高宮といても能力を使えた事はない。
ただのなんてことのない無能力の読み取りだった。
だとすると、

(自己防衛能力として植え付けたか、キヒッ、アレイスターの野郎……)

そこでふと高宮は三年前のアレイスターの言葉を思い出す。『禁書爆弾はあくまで爆弾だ。爆発させると恐怖を味わうことになる』。
それは今起こっている事その物を言っているのではないのか。
そして、爆発とは……

(まさか……暴走って事じゃねぇよな)

芦澤は意識下ではなく無意識に強力な能力を発動させれいる。
それを行うと言うことは暴走の他ならない。
能力の暴走とは、つまりは『脳』の暴走。

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あきゅろす。
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