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竜狩りの鉄槌
言うなればプログラムされた言葉を発するコンピュータのようである。

「コード-103005-を実行します。j!g.a通.gtmdmagqujsaedgrap一rjmjeta」

そう、複雑な何を言っているのか常人では理解不能な言葉を言った瞬間、芦澤の口元が止まった。
そして再び無表情でパトリスを見つめる。

「何が…起こって?」

パトリスを無表情で見つめていた芦澤の右腕が腰と同じに後ろに持って行かれる。

「………?!!」

パトリスは何が何だかよくわからなかったが、本能的に危険を察して腕を腹部でクロスさせる。

瞬間、ドンッ
という鈍い音がクロスさせた腕の上で鳴り、パトリスの視界がギュンッとぼやける。
パトリスの体は竹とんぼのように空中で何回転かして地面にたたき付けられた。

「ぐほぁっ」

パトリスはその衝撃でよほどのダメージを受けたらしく、立ち上がるのに暫しの時間を要した。
その立ち上がった瞬間を再び衝撃が襲う。
一瞬で距離を縮めた芦澤がパトリスの腹部を蹴りあげたのだ。

「あ……ぐ」

パトリスは再び宙に浮き上がり、先ほどと似たようにコンクリートの地面へと落下する。
しかし、先ほどとは異なり、瞬時に体制を立て直す。さすがはプロと言った所かもしれない。この短時間で衝撃を逃がし軽減させるような方法を見つけ、実行したのだから。
そして言葉を唱え始める。

「鳴り響くは招雷の響き――」

これは人間など簡単に壊せてしまう魔術だ。重要な禁書爆弾を壊しては今までやってきた事が無駄となってしまう。

「――天より落ちて灰塵と化せ――」

しかし、そうだとしても今のパトリスには躊躇いなど全くない。
こうでもしなければ自分が殺られてしまう、とそう思えていた。
これは防衛本能による攻撃。

「竜狩りの鉄槌――!!!」

パトリスが腕を突き上げると同時、空から雷が轟いた。雲があるわけでもない、星ががよく見える夜空から雷が墜ちて来たのだ。
それは、鼓膜を突き破るような、何物であろうと砕いてしまうような轟音を立てて芦澤の頭上から降り注いだ。
その轟音のとうり雷が墜ちた場所のコンクリートの床は砕けて捲れあがり、まるでハンマー、つまり鉄槌ででも叩いたかのような衝撃の走り方だった。
立ち込める粉塵。
こんなものを受けたら人間の体などひとたまりもなく消し飛んでしまう。
だからパトリスは一瞬安堵の笑いを漏らした。

しかし、ジャリッという音が粉塵の奥から聞こえた。その瞬間、パトリスの身体中を毛穴がブワッと開くような感覚が襲う。
先ほどの『鉄槌』は間違いなく芦澤の体をとらえたはずだ。であれば生きている事などまずありえない。
それなのに、なぜ芦澤は無傷で立っているのだろうか。
なぜ全く表情一つ変えずに立っているのだろうか。

「は、ありえないだろ。いくらなんでも竜狩りの鉄槌を受けたんだ……なぜ」

パトリスは不思議と笑っていた。楽しいわけでも、何かがおかしいわけでもない。なのに勝手に口が笑っていた。

その瞬間、
ドッ、という音と共に彼の顔が後ろに飛ぶような感覚が起こり、両足が地面から離れてしまった。

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あきゅろす。
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