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ルーン2
夏喜は振り返る事はしなかったが、申し訳なさそうに、しかし笑って言った。

「悪いな、高宮。やっぱり着いて来ることに決めてしまったぜ」

高宮には夏喜の背中しか見えていない。なのに、なぜかどんな表情をしているのか分かった。
高宮はその表情に受け答えするような表情で、

「ハンッ、クソッたれめ」

笑いながら吐き捨てるように言った。
夏喜にそう言うと、高宮はパトリスのの顔を見る。

「お……?なぜ君が来るんだ?まさか朧が……?」

パトリスは驚きを隠せないようで、素直に言葉がなかなか繋がらないでいる。
だが、それも一瞬。
パトリスは、朧が倒されたのか、それとも何らかの理由で逃してしまったのか、と夏喜がパトリスの目の前にいる事情を簡単な考えで片付けた。
ただ、朧の身など全く案じてはいない様子で。

(ふぅん……どちらにしろ、俺には関係ないしね)

パトリスは笑みを浮かべる。
彼はかなりの負傷を負っている。その彼と対峙する敵が二人になったにもかかわらず、彼の笑みは開き直ったような笑みではなく、自信に溢れたような笑みだった。

「「………?」」

夏喜と高宮は同時に違和感を感じた。
夏喜は単なる違和感だったが、高宮は完全なる違和感の原因を感じていた。

「ねぇ、高宮?ルーンってなんだっけ?」

?と夏喜は訝しげに相手の出方をうかがったが、高宮はゾクッと背中を硬直させて息をのんだ。

「例えばさあ、ルーンが相手を囲むよにはりめぐらされていたらどうなるんだろうねぇ」

ニヤニヤと、声は楽しそうに、

「そのルーンの中で魔術を使ったらどうなるかな?」

夏喜はジリッと足に力を込める。
高宮はギクリッとした。
しかし、動くことがてきない。せめて夏喜に言葉を伝えようとするが、それを遮るように続くパトリスの言葉。

「そう、ちょうど今みたいに」

夏喜はやっと悟ったパトリスが何か危険な魔術を使おうとしていることを。

「ねぇ?高宮?もうわかったよねぇ」

病院の屋上を覆うようにして突き刺されたダーツ。
そのダーツにはもちろんルーンの文字が。
そう、屋上はパトリスが命じれはいつでも魔術が発動する檻となっていた。獲物がかかるのを待ち構えていたかのように。

「じゃ、そゆことで」

パトリスはパチンッと指を弾いて音を鳴らした。
直後、夏喜と高宮からあらゆる音が吹き飛んだ。
パトリスの仕掛けた檻の中にいた夏喜と高宮には二本の雷槍が突き刺った。一瞬で身体中を駆け抜けた雷は二人の意識を瞬時にして奪いさった。まさに瞬殺というにふさわしいスピードだった。

砲弾に薙ぎ倒されるように二人の体が地面に叩きつけられた。そのまま勢いでゴロゴロと地面の上を一、二メートルも転がる。手足を乱暴に投げ出してうつ伏せに倒れたその姿は、なんだか壊れた人形のようだった。

「ったく、やはり範囲が足りないみたいだなぁ……二人とも殺せなかった」

パトリスは屋上の一角に突き刺さったダーツを一本引き抜いた。

「ま、動かないみたいだし、十分か」

パトリスはそのダーツを笑いながら見つめる。

「邪魔は消えた。さ、本番だ。起きてもらおうか、芦澤海澄――いや、禁書爆弾?」

カツッカツッと一歩ずつ屋上に倒れた芦澤に向かってパトリスは足を進めてゆく。

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