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読み取り
夏喜は言葉の意味が理解できなかった。
学園都市は科学の街だ。世界で最も科学が発達した街なのだ。
なのにそれを統括する理事長が魔術師?

「………魔術師、だって……?」

夏喜は自分の耳が聞いたのは正しいのか、確かめるようにポツリと聞く。
朧は素直にそれに答えた。

「そう。アレイスターは魔術師……それも世界最高水準の…じゃ」

アレイスター=クロウリーが魔術師として活動したのは、わずか70年ほど。
それだけで、数千年を超える魔術師の歴史が塗り替えられたとまで言われ、現在の魔術師の2割がアレイスターの亜流、何らかの影響を受けている者ならば5割に届くとされる。
法の書などの魔道書を記した魔導師でもあり、名実共に魔術師の頂点に君臨していた彼は何らかの理由で魔術を捨てて科学に奔った。

「そんな魔術師が、なぜこの学園都市の理事長を?」

「それは誰も知らない。知っているのはアレイスター自身だけじゃ」

「そう……なのか」

「ただ、」

朧は少し声のボリュームを大きくした。塾の先生がポイントを指摘する時のように。

「ただ……?」

「それだけの魔術師なれば、魔術を無効化する物を作れても不思議ではあるまい?」

その時、ふと夏喜の頭を一つの単語がよぎった。
『禁書爆弾』。
高宮が言うには10万3000冊の魔導書を保管する『禁書目録』が悪用された場合に備え、魔術を中和する物。
今の朧の言葉が、中和=無効化と言うことになるならば、

「芦澤は……アレイスターが作ったとでも……?」

朧は静かにうなづいた。

「そう……正確には彼女の脳に何らかの開発というのを施したらしい」

『開発』――学園都市が有する180万の学生に向けて行っている、超能力を発現させるための授業の事だ。薬剤等を投与して行う脳開発というのが一般的であるが、単なる『開発』ならば学園都市に任せて置けばいい。
それをしないからには何らかの理由があるのだろう。

(例えば……魔術絡みの……)

ふと、朧は夏喜の考えを汲み取ったかのように言葉を発した。

「どうやら……情報の一つによれば、魔術を無効化する方法を導き出し、それをコード化して脳に組み込んだと言う情報があるのじゃが」

なるほど、と夏喜は思う。
高宮が言っていたが、超能力者には魔術は使えない。しかし、コード化すれば可能になる可能性も否定できない。
例え、それが魔術だったとしても、『それは能力です』というコードと組み合わせて脳に組み込めば、それは単なる『能力』として利用出来るのではないか。

「しかし問題は、どうやってコードを組み込むんかなんだよなぁ……芦澤がそういう能力を持っていれば別なんだけど」

夏喜の独り言のようなつぶやきに、何かが頭に引っかかったのか、朧の肩がピクリッと震えた。

「確か、アレイスターは……彼女を『読み取り(コードリーダー)』と呼んでいるのを聞いた事がある……」

「読み取り?」

夏喜は目をひそめて考える。
『読み取り(コードリーダー)』、名前の通りの能力ならば、見ただけでコードを読みとれる。と言った所だろうか。
おそらく、そのような能力があったとして、よくても低能力者(レベル1)程度だろう。

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あきゅろす。
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