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激突
「ふふん。なら俺も告げねば失礼だよねぇ」

パトリスの口が真剣味をおびた形になる。
魔術師としての本性をさらすように。

「俺の名は『狼を一頭にせざる者(lupus021)』……ま、知ってたかもしれないけど、宣言したからには勝たせてもらうよ。その完全性こそが、キミに対する礼儀ってものだろう?」

高宮は返事をしない。
パトリスもそれに対して何も告げない。
一秒でも早く戦いを始めることが『敵』と認めた者に対する最大の思いやりとでも言うように。

二人の魔術師は瞬時に激突した。
様々な魔術を操る天才魔術師と、魔術は使えないが回転変換という強力な能力を持つ大能力者が。

高宮は瞬時に体の回りを公転するコンクリートを体の目視が出来ない程にまで異常加速させる。
そのまま地面を蹴った。
高宮は10メートル程の距離を瞬間的に縮める。

それと同時にパトリスも後方へ退きながら、上から地面と垂直に切り下ろした。

その直後、高宮の頭上に直径5メートル程の大岩が無数に布陣を張る。

それは高宮の体を押し潰そうと彼めがけて垂直落下をする。

「ハンッ、無駄だ」

その岩は高宮のコンクリートの装甲を突き破ったが、高宮の回転変換で吹き飛ばされてしまう。

「やはり高宮……その辺りは予想済みだよ!」

しかしパトリスは笑いながら剣を45゚に振り下ろす。
しかし高宮の足は全く緩まない。
彼の体を覆う強力なコンクリートの装甲を纏ったまま。
その高宮に迫りくるパトリスが切り裂いた空間から溢れ出る灼熱の炎。

(――邪魔なんだよおぉ)

高宮は装甲の回転の向きを変えてパトリスへと向けた。
回転によって生まれた小さな乱気流が無数に積み重なり、強大な乱気流となる。
コンクリートは炎を物ともせずになぎ払い、パトリスの体を襲った。

「ぁ……バカな……あああぁ」

その無数のコンクリートはパトリスの体を強く打った。腕で身体を防ごうとする抵抗も虚しく。

「クハハ、残念だよ、パトリスこんな簡単に終わっちまうようなヤツだったなんてなぁ!」

高宮はどこかつまらなそうに歯ぎしりしながらも、追い討ちをかけるように、更にコンクリートをパトリスの体を襲うように仕向けた。
コンクリートは壁ににいくらかぶつかり、砕けて粉塵となった。
その時響く、大きな轟音がその攻撃の凄まじさを物語っていた。

その粉塵がパトリスの倒れた体を覆い隠している。
その粉塵を前髪をかきわけてしばらく眺め、静かにそこから目を離した。
そして高宮は無言でその場から振り返って歩き始める。屋上の傍らへ立掛けてあった禁書爆弾(ダイナマイト)へと向かって。

「パトリス……すまねぇな…こちとらそんな簡単に手放せるモンじゃねぇんだ」

高宮は立ち止まる。
そして、ソレと高さを合わせるようにしゃがみ込んだ。

「バカだよなぁ……もっと早くこうなるかもしれねぇって思っておきゃあこうはならなかったじゃねぇか」

そして高宮はソレに優しく笑いかけた。
おそらく自分で今の顔をみたら吐気がするかもしれない。
そんな笑顔で、彼は呼びかけた。

「なぁ……海澄よぉ」

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あきゅろす。
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