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回転変換A
「禁書爆弾は俺らに渡してくれるよねぇ?」

「ハンッ、いいだろう」

パトリスの言葉に、高宮の中には憤怒、憎悪、殺意、殺伐、など様々な感情が溢れていた。
しかし、それを抑え込んで出した一言。
いや、冷静さを失わないためにかろうじて絞りだしった言葉なのかもしれない。

「へえ、くれるんだ」

「ただし」

「ただし?」

「俺をぶっ倒してから、だ」

パトリスはまるで言葉を予想していたかのように、全く驚いた素振りを見せない。
それどころか先ほどから続けている裂けた笑みを全く変えていなかった。
ただ、小さく何度も何度も、うなづいているだけだった。

その時だった。瞬間、不意にパトリスの口に僅かに力が入ったような素振りを見せる。
ダンッ
その直後、パトリスは屋上のコンクリートを蹴る。
義手から生える剣を不気味に青白く光らせて。

「キヒィッじゃなきゃあ面白くねええぇ!」

高宮もそれに合わせて地面を蹴った。
そして、普段から持ち歩いているのか、ベルトと腰の間に挟んだ金属の円盤を引き抜く。
そして、その円盤は鋭く回転を始めた。目標を強く切り裂くべく。

「おおぁ!」

高宮は前進しながらそれを投げつけた。
パトリスはその円盤を防ぐべく剣を円盤の軌道に合わせる。
金属と金属が擦れる音が耳を突き抜けた。

しかし高宮は止まらない。
円盤を防ぐ事で、パトリスに隙が出来ていた。
高宮は走るよりもう一段階強く、地面を蹴りパトリスの懐へと入り込む。

「クファ、回転変換をなめんなや!」

そして高宮の能力、回転変換(ターンスピン)で腰の回転、肘の回転、足首のひねりの回転が急速に高まった拳がパトリスの顎へと強く叩き付けられた。

180cmを超える大男の身体は、2m程の高さにまで体が浮き上がり、体を縦に3回転させて背中から強く、屋上のコンクリートに叩き付けられた。

「ふぐぁッ」

とパトリスは声にならない声を洩らしてその場に沈んだ。

「ヒヒヒッ、俺の回転変換はまだまだこの程度だと思うなよぉ?」

瞬間、高宮は倒れたパトリスを見下ろして足首を動かした。
性格に言うと捻る様に足首を半回転させた。
その時、轟!!
と病院ごと揺らしてしまうかと思う程の轟音が病院の屋上に響き、高宮の周辺のコンクリートの床に円形の形に亀裂が走る。
そしてコンクリートはまるで手ではぎとったかのように捲れ上がった。
足首をひねり、半回転させたことによって生まれた回転方向の力が、高宮の能力によって増幅させた。
その結果、過度の力に耐えきれなくなったコンクリートの床が捲れあがったのだ。

そして、捲れ上がったコンクリートは地面に別れを告げ、新たな主人となった高宮の身体の周辺を回り始める。
高宮の体を太陽のような恒星に例えるならば、高宮の身体を回るコンクリートはその太陽の回りを公転する地球などの惑星のように。

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