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バキバキッと鈍い音が続く。
それが人を折り曲げ、砕く事による音なのか、それとも異なる物なのか、それさえも目視できない木の雨だった。




――時は少し遡る。
夏喜が朧と出会った瞬間まで。
それと、ほとんど同時の時間。

「ハッハー!うおおぁあぁ」

扉を突き破って高宮を襲ったのは岩の弾丸だった。
しかし彼は驚きも、うろたえもせず、ただ舌が見える程にまで大きく口を空けて笑っていた。
そのまま弾丸など何もないかのようにその岩の弾丸の群れへと直進してゆく。

ガンッ、ゴンッ
と岩が物を撃つ鈍い音が無数に岩の数だけ響いている。

「キヒッ、こんな岩がなんだってんだああぁ?!」

しかしその音は高宮の肉や骨、その内臓を打つ音ではない。
岩の弾丸は高宮に当たるやいなや、まるで鋼鉄の壁にでも当たったかのように彼の身体には傷一つ付けることはせず、四方八方へとあっけなく飛び散った。

「ハッハァ!一度受けた攻撃なんざぁ、計算式が出来上がっちまってンだよぉ!」

しかし、岩の弾丸は止まらない。

「ハッ、邪魔なんだよぉ!」

だが、その岩達は高宮に触れた瞬間、回転が止まり、そして逆回転になって再びあっけなく飛び散った。
高宮を襲っていた弾丸の群れが止まり、不意に辺りが静寂に包まれる。

その静寂を、
カツンッ
という小さく高い音が断ち切った。
飛び散った岩の一つが扉の向こうに見える屋上の床にぶつかり、そして転がってゆく。
そしてそれは、高宮より一回りは大きいであろう人影へと向かっていった。

「ヘェ、高宮は面白いねぇ。いつも楽しませてくれる」

その人影は自分の目の前に転がってきた岩を靴で踏みつけるように止める。

「パトリス……テメェ、それは何だ?」

そこにいたのは、勿論の事、空間を切り裂く魔術を使う、イギリス清教に属する魔術組織、必要悪の教会(ネセサリウス)の一メンバー、パトリス=ネビルだった。

「ん?どうした?」

彼からは長く目を隠した髪が邪魔をして、目で表情を読みとることはできない。しかし、口元だけで充分過ぎる程にまで表情が読みとれる。
不気味に裂けた笑み。

「そこにあるのは何かって聞いてんだよぉ!コラァ!」

血でも吐き出すかのように強く言葉をぶつける。
高宮にはパトリスは眼中に入っていなかった。
高宮は病院の屋上の壁の傍らに立掛けてあるものを見ていた。

「ん?なに?コレ」

パトリスはそこにある、それを指指す。
そして一瞬ケラッと笑ったかと思うと容赦なく蹴り付けた。

「止めろ!」

しかし、蹴りは目標を捉えることはなく、それに紙一重の位置を蹴っていた。
そして、高宮の反応を楽しむように二、三度小さくうなづいた。

「コレかい……禁書爆弾(ダイナマイト)に決まってるよねぇ」

ザンッ
高宮の背中を何かに切り裂かれたかのような冷たい感覚が駆け巡る。
まるで顔の中心をナイフでも突き刺されているようだった。

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