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嵐の前の沈黙
(つってもヤツが人払い以外に、どんなルーンを使うのかわわからねぇなぁ……厄介なモンじゃなきゃあいいが)

高宮は拳を強くを握り、ペッとダーツに唾を吐き捨てた。
そして彼は再び動き出し、病院の階段を探す。
広範囲の状況を確認するのに最も適しているのは下でもなく、現場でもない。
そこに留まっているとしたら、素人かよほど経験が少ない者でしかないだろう。
しかし、高宮は経験上知っていた。

(パトリスの野郎はそんなザコじゃねぇ)

階段を見つけた高宮はそれを、登り始める。
ルーンを刻むと言う事は自分にとって有利な場所を作り上ると言う事である。
よって、この病院内にいるというのは確定的だ。
この病院内、そして最も高い位置にあり、外を広範囲に見渡せる場所。

(屋上だな)

高宮は場所を確定すると、階段を強く蹴り、一気に三段飛ばしで屋上へと向かった。
パトリスの立つ屋上と、高宮との高低差が急激に縮まってゆく。

そしてそれが0になった時。
ドバンッ
と屋上へと通じる扉が、蹴破ぶられる様な激しく腹に響く音を立て造作に弾き飛ばされた。
そして扉を突き破ったソレは弾丸の群れとなって高宮の身体を襲う。
にも関わらず高宮は笑みを浮かべていた。

「キヒヒ、こうでなくっちゃなぁ、パトリスウゥゥゥ!」

ダンッ
と強く地面を蹴り高宮は彼を襲う弾丸の群れの中へと真っ正面から突っ込んでいった。




「なんだ?御坂と別れて以来、人と一回もすれ違ってないような?」

辺りは異様な静寂に包まれていた。
夏喜が歩いている道には、人影も車両も何一つ人の気配らしきものが感じられない。

学園都市の人口の八割は学生で構成されている。
そのため夜になれば人も少なくはなる。
しかし、夏喜が歩いているのは比較的主要な大通りだった。
夏喜はデパートの電光掲示板を見る。時間は八時三十分。
その大通りがこの夜になったばかりの時間帯で、人も車両も空になるとは到底考え難い。

(おかしい……この時間にこの通りに人がいないなんて……)

体を東西南北へと動かし辺りを見回すが、やはり人の気配はない。
いつもはそこまで広いと感じない道はいつもより広く感じられ、まるで滑走路のような道路には車の一台も走っていない。
路上駐車された車はまるで乗り捨てられたように無人。
まるで酷い田舎の水田の真ん中にでも立っているようだった。

「くそっ!なにが……」

目的地に設定していた病院は、夏喜の視界が届く位置に見えていた。
彼はそこをめがけて走り出そうとしたが、

「パトリスがルーンの刻印を刻んでおるだけじゃ。他も刻んでるようじゃから、周囲ニキロは人が全くいないと言う事になるのぉ」

背後からの声が走り出そうとする夏喜の体を引き止めた。
そして振り返る。

そこに立っていたのは、夏喜より、頭一つ程小さい身長150センチ程の少女だった。
髪をバンダナで隠し、隠し切れなかった髪が後ろから腰まで長く伸びている。
また、目にかかる程の長さの前髪も少しバンダナからはみだしていた。
袖はタンクトップのように短いが、黒一色の浴衣のような物を着ているようだ。しかし動かしやすくしているのかその丈は膝上五センチ程までしかなかった。
そして両足の太股にはベルトの様な物が左右に2つずつ巻かれていた。

「この一帯の人だけに『何故かここには近付こうとは思わない』よう集中を反らしているだけじゃ。心配はすんな」

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あきゅろす。
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