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病院
美琴はメモ用紙を見つめながらトボトボと肩を落としてその場から去って行った。
辺りは綺麗な夕焼けが光を失い、辺りは青に包まれ始めていた。

「ふぅ……今は相手をしてる暇はなかったんだよ。悪いな」

夏喜は美琴と20m程の位置にある路地裏に隠れて美琴が離れるまでの様子を伺っていた。
肩は大きくゆれ、咳の混じった荒い息が壁に反射しやけに大きな自己主張をしていた。
やはり、靴の使用で大幅に体力を消耗してしまっているようである。
20mも離れていれば、美琴の耳に届くはずはないのだが、なんだか聞こえていそうで怖い。

「ま、アドレスは渡しておいたし、なんかあれば言ってくるだろ。……よかったのかな?」

夏喜に深い意味はなく、ただ単にその場を逃れるために普段から一枚用意しているメモ用紙に書いたメールアドレスを渡しただけである。
時間がないから後にして、とそれだけの意味だった。
普通であれば逃げるだけだろうが、夏喜は性格上、それは許せないようで、連絡先を相手に残して来てしまう癖がある。
このような事が、夏喜が馬鹿よばわりされるゆえんである。

「ま、大丈夫だろうさ……チクショ、疲れたなぁもう」

いらない所で余分な時間と体力を使ってしまった。
と夏喜は思いながら夏喜は大きく肩を揺らして呼吸しながら路地裏から顔を出しす。
そして美琴が無事に離れて行ったかどうかを確認する。

(どうやら、無事にやり過ごせたみたいだな)

夏喜は狭い路地裏から出て額についた汗を手でぬぐう。

「ふぅ…もう走れねー。歩いて行こ。なんなんだよ……上条並に不幸だ」

顔を青くして肩を落としてできるだけ負担を少なくしようと必死なのか、一回の呼吸が大きく歩幅も小さい。

暗くなった学園都市、美琴と夏喜は同じ姿勢で歩きながら全く逆の方向へと歩いて行った。




夏喜により一足先に高宮は病院に着いていた。
というより夏喜が巻き込まれてしまった為に余分な時間を過ごしてしまっていたためであるのだが。

「キヒッ…にしても……やけに静かじゃねぇか」

病院が消灯時間になっている時間というわけでもない。
しかし消灯時間だったとしても静か過ぎていた。
医者の何人か、最低でもナースステーションに何人なが残っているのは間違いない。
学園都市でも名医が入っていると言われるこの病院ならなおさらだ。
なのに、人っ子一人の気配さえない。

「この感じ……?」

普通の人間なら何が起こっているのか判らずただ不審に感じるだけだろう。
ただ、高宮は大能力者で魔術師でもある。
この瞬間にも高宮の思考は答えを導き出していた。

「クフッ、人払い…かょ。」

高宮は壁にダーツが刺さっていたのを見つけた。
パトリスのダーツケースに入っていた物のようだ。
そのダーツには文字が刻まれていた。

「パトリスのルーンか……キヒッ、やっぱり本気で狙ってんのかぁ!」

ダーツを暫く眺めた高宮はふんっと鼻で大きく息を吐いて、ルーンと呼ばれたダーツを元にあった位置へと突き刺した。

「ヒヒ、このままにしとくかぁ……こういうのは気付かれない方がいいからなぁ」

しかし、高宮は暫くそのダーツを見つめる。
正確にはそれに書かれた文字を。

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あきゅろす。
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