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除去
つくづく変わったヤツだ。高宮はそう思った。

「ヒッヒ……なら始めるぜ、海澄がいなくなった理由もだいたいわかったしな」

高宮は準備運動をするように腰をギュッギュッと捻り、筋を伸ばした。

「じゃ、行くとするけぇ」


「芦澤のいる所にか?」

「ヒャハッ…当然じゃねぇか。俺は行く。テメェは好きにしな。まっ着いて来るとしたら馬鹿かアホのどっちかだろうがな」

そういいながら振り返り、高宮は夏喜から目を離す。
そして、ふぁ〜とアクビをしながら、路地裏から表通路に出ていこうとする。

「ヒッヒ、行くかね」

そして表通路に出た高宮はアキレス腱を伸ばす。
そして、一瞬夏喜の方向をチラリ、と見た。

「おぃ、待っ……」

しかし、高宮は夏喜が言うのを待たずに走り出した。
その時の高宮は、軽く親指を立てて笑っていた。絶対に自信があるとでも言いたげな顔だった。

夏喜はそれを見てすぐに路地裏から出るが、既にそこには高宮はいなかった。
ただ、一つわかる事がある。
高宮は芦澤海澄のいる場所へ向かったという事だ。

「好きにしな……か」

軽く緊張をとる前段階として、深呼吸をする。
そして、2、3秒止まった後に、夏喜は腰を屈めてかかとに手を沿えた。

「何を迷う必要があるんだよ。馬鹿って言われるのは慣れてるんでね」

そう言った時には夏喜の姿はそこになかった。
そこにはアスファルトに炎の焦げ跡が残っているだけだった。




「ふむ……ステイルは、人払いのルーンを刻んでて、神裂は能力者の一人と抗戦中か。都合が良いじゃないか」

パトリスはとある建物の屋上に座っていた。
左手に付いた義手は、武器を付け替えたり、外して本来の手の役割も果たす事ができる。
しかし、装着した剣は外さない。

「あの能力者……僕の空間魔術を叩いて潰すなんて、彼はなんなんだろうねぇ」

「学園都市の上層部に問い合わせてもこれっちゅう能力はなかったの」

パトリスは首にかかった十字架のネックレスを親指と人差し指でつまんで、月の光にかざして隣に立つ人物を見上げる。

髪をバンダナで隠し、隠し切れなかった髪が後ろから腰まで長く伸びている。
袖はタンクトップのように短いが、黒一色の浴衣のような物を着ているようだ。
動きやすくしているのか、その丈は膝上5センチ程までしかなかった。その人物を見て、パトリスは短く頷いて、

「ふうん、まぁいいょ。どうせ学園都市だ。まともな情報は期待しちゃいなぃよ。じゃ、こっちはやるから、そっちも頼むね」

「了解じゃ」

そうパトリスが聞いた時には隣にいた人物はもういない。
パトリスは持ち上げていた十字架を胸の位置に戻して首だけで背後を振り返った。

「さぁ、禁書爆弾(ダイナマイト)の除去にかかるとしようかなぁ」

髪で覆われて、見えていないが、そのパトリスの目は笑っているに違いない。
それがわかる程までパトリスの口は裂けていた。

「禁書目録(インデックス)がいつ暴走するかわからないからねぇ」

イギリス清教、『必要悪の教会(ネセサリウス)』に属する魔術師パトリス=ネビルは知っている。
ステイルと神裂がなぜこの学園都市に潜り込んでいるのかを。
禁書目録はとある魔術で細工されてしまっているという事も。
そして、神裂達がしようとしている事以外ににも禁書目録、インデックスと呼ばれる少女を救う方法があると言う事を。

「悪く思わないでね?必要なんだよ、あんなヤツらでも仲間なんだよ」

パトリスは彼の足元にある小さな影を見て一人言のように呟いた。
ただ、彼の裂けた笑みは変わらない。

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